2022年04月08日07時14分
ロシア軍は、5月9日の旧ソ連の対ドイツ戦勝記念日を前に「戦果」を求めているとみられ、ウクライナ南東部の要衝マリウポリを制圧しようと激しい攻撃を加えている。包囲戦が長期化し、人道危機が深まる中、市当局はロシア軍が「移動式火葬場」で犠牲者の証拠隠滅を図っていると主張。第2次大戦中のナチス・ドイツの蛮行に匹敵すると非難している。
ウクライナ側はこれまでマリウポリの死者を「5000人」と推計。ただ、市当局は6日の声明で▽もともと約40万人という都市の規模▽無差別攻撃による破滅的な状態▽ウクライナの精鋭部隊「アゾフ大隊」の激しい抵抗―などに鑑みると「民間人の犠牲者は数万人の恐れがある」と警鐘を鳴らした。
「悲劇の大きさは、ナチスの強制収容所以来となるものだ」。ボイチェンコ市長は、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)になぞらえて窮状を説明。「(ロシア軍は)都市全体を絶滅収容所に変えた。もはや(ロシア南部)チェチェンや(シリア北部)アレッポではなく、新たなアウシュビッツだ」と述べ、人道に対する罪に当たると訴えた。
2月下旬の侵攻当初に英メディアは、ロシア側が自軍の戦死者の増大を見込み、火葬装置を載せた大型トラックを持ち込んだと報じていた。ところが、ウクライナ国家安全保障・国防会議は今月4日になって「戦死者を火葬するためではなく、民間人に対する(戦争)犯罪を覆い隠すためだ」と指摘した。
ロシア軍が撤退した北部キーウ(キエフ)州ブチャでは、民間人とみられる多数の遺体が見つかり、国際的な非難が高まった。ブチャに隣接し、空港を擁するホストメリでも6日、住民400人以上が行方不明になっていると地元当局者が明らかにした。殺害の目撃情報は寄せられており、何らかの証拠隠滅の結果ではないかとの見方がある。
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