Pages

Wednesday, October 25, 2023

旧天竜林高事件 新証拠、元市長アリバイ示すか 贈収賄認定支える「自白」と矛盾 立証構造 信用性に影響|あなたの ... - あなたの静岡新聞

 浜松市天竜区の旧天竜林高を舞台にした大学推薦入試を巡る調査書改ざん・贈収賄事件で、ともに有罪が確定し、再審請求中の元校長(75)と元天竜市長(91)の双方の弁護人は25日までに、同校で2回目の現金受け渡しがあったとされる日時に元市長が銀行にいた可能性を示す振込伝票を新証拠として裁判所に提出した。2回目の贈収賄についてアリバイ成立の公算が高まるとともに、1回目の現金授受や調査書の改ざんも含め、新証拠が事件全体の立証構造にどのような影響を及ぼすか―。裁判所の判断に注目が集まる。

銀行から開示された伝票データの一部。振込完了時刻が午後0時26分であることを示すとみられる「12・26」の記載がある(画像の一部を加工しています)
銀行から開示された伝票データの一部。振込完了時刻が午後0時26分であることを示すとみられる「12・26」の記載がある(画像の一部を加工しています)


 「まるで『諏訪メモ』だ」。元校長の弁護団長を務める海渡雄一弁護士は、9月に開示された銀行伝票について、戦後最大級の冤罪(えんざい)事件と呼ばれる松川事件を引き合いに出し、新証拠の価値に自信を見せた。 ■「成立は決定的」 松川事件は1949年に発生。福島市の旧国鉄東北線松川駅付近で列車が脱線、転覆して乗務員3人が死亡した。国鉄の労働組合員ら20人が有罪(うち5人は死刑)判決を受けたが、虚偽の自白強要などが明らかになり、63年に最高裁で全員の無罪が確定した。
 無罪の決め手になったのは、被告らが列車転覆の謀議をしていたと検察側が主張した時間帯に、うち一人が団体交渉に出席していたことを記した「諏訪メモ」の存在だった。アリバイが客観的に証明され、裁判の潮目が変わった。
 旧天竜林高事件を巡っては、元市長が元校長に2回目の現金を渡したとされる2007年12月10日、保険契約手続きなどのため午後0時26分まで銀行に滞在していた可能性を示す振込伝票が銀行から開示された。確定判決などでは元市長は同日、銀行で手続き後、午前11時ごろに同校を訪れて現金を渡したとされる。海渡弁護士は「アリバイ成立は決定的。間違いなく再審開始につながるはず」と強調する。
■虚偽公表したが  贈収賄事件の有罪立証の柱になっているのは元市長の「自白」だ。任意の取り調べの中で賄賂を贈ったと認め、その時の様子や心情などを語り、略式裁判で罰金刑を科された。否認を貫いていた元校長の裁判にも出廷して贈賄を認める証言をし、元校長の有罪も確定した。
 元市長は後に「自白はうそだった。厳しい取り調べに耐えきれず、捜査機関がつくったストーリー通りに話してしまった」と公表し、元校長に謝罪した。ただ、裁判所は自白を虚偽だとした新証言を「信用できない」として、これまで2人の再審請求を棄却している。
 2回目の現金授受時のアリバイが成立すれば、元市長の「自白」の一部がうそだと証明されることになる。元東京高裁判事の木谷明弁護士は「2回の贈収賄はともに、自白を基にした弱い証拠で認定されている。自白の一部が崩れるならば、全体の信用性を見直す必要性に迫られる」との見方を示す。
■教員への指示は  調査書改ざん事件は、元校長から指示を受けた教員が、元市長の孫を含む生徒2人の成績をかさ上げしたとされる。確定判決は、教員の証言を基に改ざんの背景には元校長の指示があったと認定した上で、孫の大学進学への便宜を図った見返りとして元市長から現金を受け取ったとの判断を下した。
 一方で弁護側は、元校長が謝礼金をもらっていないのであれば、元市長に頼まれて便宜を図ったとする動機が弱まると指摘。中谷元市長は、自白は虚偽とした新証言の中で「大学進学について具体的に依頼したことはない」と主張する。
 元校長の弁護団は、裁判所が信用できると認定した教員の供述についても「校長の指示なく成績改ざんを主導したならば、より重い処分が下される可能性は残っていた」として、慎重に再検討をする必要性があると主張。「現金授受の事実がなくなれば、成績改ざんの罪まで崩せる可能性は十分にある」とみる。
■供述心理鑑定も  弁護側は今後、元市長の「自白」や教員たちの供述の信用性が大きな争点になるとみて、心理学者による供述分析鑑定の結果を新証拠として追加提出する構えを見せる。供述心理鑑定は被告らの自白や関係者の証言について「本人が実際に体験したものかどうか」を、内容の変遷や食い違い、他者とのやりとり、語り口などから判断する手法だ。
 別の再審事案では鑑定の結果を重視して再審開始決定が出るなど、刑事裁判の現場で近年、存在感を増している。ただ「供述の信用性は裁判官の自由な判断に委ねられるべき領域」との考え方も根強い。証拠としての価値を限定的にとどめるケースも多く、裁判所の判断は分かれている。
 (浜松総局・岩下勝哉)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 旧天竜林高事件 新証拠、元市長アリバイ示すか 贈収賄認定支える「自白」と矛盾 立証構造 信用性に影響|あなたの ... - あなたの静岡新聞 )
https://ift.tt/JvuLQVg

No comments:

Post a Comment