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Monday, September 18, 2023

10代女性に目隠しをして強姦…千葉県警「46歳元警部」の狡猾すぎる“証拠隠滅” - goo.ne.jp

「包丁見えるでしょ、動かないで」

 複数の女性に性的暴行を加えたほか盗撮を行ったとして起訴されている、千葉県警察本部「元警部」の第2回公判が8月31日に千葉地裁(品川しのぶ裁判長)で開かれ、検察官は元警部に懲役17年を求刑した。【高橋ユキ/ノンフィクションライター】

 市民の生活を守るはずの警察官が盗撮を行なっていただけでも驚くべきことだが、あろうことか性的暴行を繰り返す“連続強姦魔”だったというのだから、その衝撃は計り知れない。逮捕は昨年8月。当時、捜査4課の警部だった岡田誠被告(46)は、京成千葉駅の上りエスカレーターで女性のスカート内にスマホを差し入れ、盗撮したとして現行犯逮捕された。これがきっかけで、過去の性的暴行事件も明るみに出る。その後の捜査において、現場から採取されたDNA型が一致したことなどから、未解決だった複数の性的暴行事件が岡田被告によるものと判明したのだ。

 今年7月の初公判罪状認否で「すべて間違いありません」と、か細い声で認めた岡田被告。彼は3件の盗撮のほか、2014年から2017年にかけて、10代後半〜20代の女性3人に性的暴行を加えたとして、強姦や強制性交等などの罪でも起訴されている。

 被告はきまって深夜に、空き巣の如く窓や玄関ドアから女性宅に侵入した。そして、寝ていた女性にいきなり刃物を突きつけて脅し、犯行に及ぶのだった。

 2014年7月の深夜、岡田被告はDさん(当時19)が住む部屋に掃き出し窓から侵入。就寝中のDさんに包丁を突きつけて「顔を見たら殺すから目隠しする」。その言葉通り、Dさんに目隠しをした上で強姦した。そして、翌15年7月の深夜には、Fさん(当時22)方に侵入。「騒ぐと殺すぞ」と刃物のようなものを突きつけ、バスタオルで目隠しをして強姦。さらに2017年7月の深夜、Eさん(当時29)方の掃き出し窓から侵入し、「包丁見えるでしょ、動かないで」と刃物を見せて脅した上で性的暴行に及んだとされる。

犯行後、被害者を“風呂”に入れる

 行為後、岡田被告はすぐに現場を立ち去らなかった。その代わりに、被害者宅のシーツを洗濯したり、被害者を風呂に入れたりしていたという。犯行に及んだのが現役の警察官だったことを考慮すれば、“証拠隠滅”という言葉が思い浮かぶのはむしろ当然と言える。岡田被告が逮捕後しばらく、DNA鑑定のための検査を拒んでいたことも頷ける話だ。何度となく繰り返されたであろう脅し文句と手慣れた犯行、証拠を残さない狡猾な手口、その結果、積み重なった未解決事件の数々――。岡田被告が手を染めた性的暴行は、起訴されている3件だけではないこともわかっている。

 全ての公訴事実を認めていた岡田被告ではあるが、7月の初公判で、性的暴行の詳細については「記憶がない」と証言していた。また、2014年1月に孤独死した父親に対し「もっとできることがあったのでは」という自己嫌悪があり、「やけになって、相手の立場で物を考えられなくなった」状態で性的暴行を繰り返したとも語った。

「犯行の記憶」がないと主張する岡田被告に対し、第2回公判で裁判官らがその理由を尋ねると、黒いスーツに坊主頭の被告は、マスクの下から聞こえるか聞こえないかの弱々しい声でこう語った。

「自分のなかで罪悪感を持つような行為……、記憶、消したい部分もある」

 むしろ罪悪感を持つ行為であるほど忘れられないのではないか、という問いに対しても「大体のことは覚えていますが、時間が経ってしまったとか、そういうことで記憶がない」と、あくまでも犯行当時の記憶がないと主張し続けた。

「性欲や好奇心、スリル感があった」

 2014年に起こした事件については「性的な動画に触発されたと思う」とも述べていたが、裁判長から動画の内容について尋ねられると「何を見てたかってのは覚えてないですが、携帯で動画やビデオ……見てました」と、これまた消え入りそうな声で証言。「相手の同意なく蹂躙する方法での性行為というものですか?」と裁判長からさらに詳しく尋ねられ「はい」と認めていた。

「性欲や好奇心、スリル感があった」とも証言していたが、この詳細についても「どういう体してるのか、とか、どのような姿、格好をしているのか……自分でもこういう行為を続けたことについて……」と語尾が聞こえなくなる。そのため、裁判長が、

「今後、大丈夫なんでしょうか」

 と、出所後の再犯可能性を危惧して問いかけた。これに対しても、「二度と同じようなことはできません。そのために……社会復帰できたら、再犯防止の……」と、やはり語尾が消え入るような声で答えるのみ。出所後の再犯防止に向けた決意は判然としなかった。

「警察官だからこそ、どのようにすればバレないか知っていたはず」

 法廷では弱々しい振る舞いを見せながら自らの行為を「記憶がない」と繰り返した岡田被告。だが被害者たちは、事件のことを忘れられず、今も苦しみ続けている。

「就寝中に馬乗りになった犯人に、包丁を突きつけられた。本当に殺されるかもしれないという恐怖の中、完全にモノのように扱われた。悔しくて仕方なかった。犯人は“警察に通報するな。どこまでも追いかけるぞ”と言っていたため、何年もずっと怯えて生活していた。住んでいた部屋は引越しせざるを得なくなったが、周囲に聞かれるたび、笑顔で誤魔化すのが本当に辛かった。小さい音に過敏に反応するようになり、ほとんど眠れない日々が続いた。ようやく日常を取り戻しかけたころ、犯人が逮捕されたと聞き、フラッシュバックするようになった。涙が出てきたり、恐怖に襲われたり、何も手につかなくなった……」(Dさんの意見陳述・代理人弁護士による代読)

「包丁を見るたびに事件を思い出しておかしくなる。事件があって5年間は、いつかまた犯人がレイプしにくるのではないかと恐怖に怯えていた。包丁を見ると、これで自殺してしまおうかと考える。この苦しみが一生続くのかと思うと、耐えられるか不安になる」(Eさんの意見陳述・同)

 犯人が長年逮捕に至らなかったことから、被害者たちは恐怖しながら日々を過ごしていた。しかも、逮捕されたのが現職の警察官だったことについて、Dさんは「犯人は警察官と聞き、とても驚いた。もはや社会そのものが信じられない。絶望的な気持ちになった」とその衝撃を語り、Eさんも「警察官だからこそ、どのようにすればバレないか知っていたはず」と述べ、両名ともが、岡田被告に対して「一生刑務所にいてほしい」と望んでいた。

 ところが、岡田被告の弁護人は、被告が警察官だったことをもって情状酌量を求めていた。「警察官だったことから大々的に報道され、家族は離散した。自業自得と言えばそれまでだが、警察官だったことで社会的制裁も受けた」と、広く報道されたことや、退職金が不支給になったことなどを理由に、検察官による懲役17年の求刑に対して“懲役10年”が相当であると述べている。

 終始、「記憶がない」と自らの行為に目を背け続ける岡田被告。判決は9月27日に言い渡される。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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