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Sunday, July 9, 2023

証拠資料が膨大 裁判開始の見通し立たず 安倍元首相銃撃1年 - 毎日新聞

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安倍晋三元首相が銃撃された近鉄大和西大寺駅前の現場。付近は当時ガードレールに囲まれていたが、事件後に道路が整備され、市民が追悼できる花壇が設置された=奈良市で2023年6月29日、久保玲撮影

 安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市で参院選の応援演説中に銃撃されて死亡した事件は8日、発生から1年を迎えた。首相経験者が殺害されたのは戦後初めてで、事件をきっかけに要人警護のあり方やローンオフェンダー(単独の攻撃者)対策、「宗教2世」の境遇などさまざまな課題が浮き彫りになった。

 東京・芝公園の増上寺では8日午前11時から、自民党と安倍派、安倍家合同の一周忌法要が営まれる。事件現場や安倍氏の選挙地盤だった山口県下関市でも献花台の設置が予定されている。

 事件は2022年7月8日午前11時半過ぎ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で発生した。安倍氏は背後から接近した山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=に手製のパイプ銃で2度銃撃され、約5時間半後に死亡が確認された。

 捜査関係者によると、山上被告は「母親が旧統一教会(世界平和統一家庭連合)にのめり込んで多額の献金を続けたことで家族が崩壊し、教団を憎むようになった」と説明。教団最高幹部らの襲撃を計画したが接触が困難で、教団とのつながりが深いと考えた安倍氏を狙ったとされる。

 事件は今後、奈良地裁で国民が参加する裁判員裁判によって審理されるが、公判が始まる時期の見通しは全く立っていない。山上被告の弁護団からは「初公判は24年後半以降になるのではないか」と指摘する声も上がる。

 安倍氏への銃撃行為は衆人環視の状況で起きていることから犯人性の争いはないとみられ、刑事責任能力の有無や動機を巡る判断が大きな焦点になる。

 裁判員裁判の対象事件は、裁判官と検察官、弁護人の3者で争点の絞り込みや証人尋問の日程を協議する「公判前整理手続き」を原則非公開で開くことになっている。6月12日に開始予定だったが、「不審物」騒ぎで延期になり、この手続きすら始まっていない。

 犯罪白書によると、公判前整理手続きに要した21年の平均期間は10・5カ月(前年比0・5カ月増)で、長期化する傾向にある。

 検察は今回、山上被告の精神状況を調べる鑑定留置を170日間実施した。教団への敵意が安倍氏に向かったとする動機に論理の飛躍があるという指摘に備えたとの見方もある。

 弁護側にはこうした鑑定結果や事件の証拠など膨大な資料の開示が始まっており、弁護団の一人は「資料を全て読み込み、被告の主張や弁護方針を固めるまでに相当な時間が必要になるだろう」と指摘した。弁護団は週1回の頻度で、大阪拘置所(大阪市都島区)で勾留されている山上被告と面会を続けているという。【川畑岳志、木谷郁佳、吉川雄飛】

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