警察に行けなくても性暴力被害の証拠を残せる仕組みを全国に作ってください——。
支援体制の拡充を求めるネット署名をはじめた性暴力当事者らが9月16日、東京・永田町の衆院第1議員会館で、この日までにあつめた約2万7千筆の署名と要望書を内閣府など関係省庁に提出した。
性暴力被害を刑事事件として立件するには、客観的な証拠が不可欠だ。署名の発起人である「性暴力被害者支援情報プラットフォームTHYME」の卜田素代香さん(仮名)は、性暴力被害にあったあと総合病院の救急外来に行った。しかし、証拠採取は「警察からの依頼がないとできない」と断られてしまった。
卜田さんは「内閣府の調査によると、被害後に警察に連絡・相談できた人はわずか5.6%とされています。被害者は大ごとにしたくないと思ったり、警察に行った先の恐怖が大きかったりする。被害者が少しでも被害を訴えやすくなる社会にするために、訴えた時に不利益を被ることがないように、声をあげました」と話した。
●「警察に行くと報復にあうのではないか」踏ん切りつかず
卜田さんは性被害にあったあと、まずは自分の安全を確保するため、数時間かけて実家に避難した。卜田さんのいないところで、両親が地元の警察に連絡してくれたが、警察からは「被害にあった地域が管轄になる」と自宅近くの警察に行くよう言われた。
加害者から「見張っているから」などと被害申告をしないように脅され、身の危険を感じていた。「警察に行くと報復にあうのではないか」という思いと「証拠を残さなければいけない」という思いがせめぎ合った。
そこで総合病院の救急外来に行き、証拠採取をできるか尋ねたところ、「警察からの依頼がないとできない」と言われた。
その後、「警察に行くしかないのか」と悩んだが、両親の後押しもあり、翌日午後に再び被害にあった地域の警察まで戻り、事情聴取を受けた後、病院で証拠採取した。
●3割「警察を通さないと証拠保全ができない」と回答
「THYME」が2022年8月に全国52の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」におこなったアンケート調査では、27のセンターから回答があり、そのうち3割が「警察を通さないと証拠保全ができない」と回答した。保管のための冷凍庫がないことや警察との連携が進まないこと、医療機関側の負担などの理由が挙げられた。
「警察に通報せずに証拠保全できる」と回答した自治体の中でも、医療機関が一つ(東京都)だったり平日日中しか対応していなかったり(兵庫県)、医療機関や予算が足りていないことも浮き彫りになった。
要望書では、内閣府として実態を把握することや各自治体の支援を統一するための予算編成も求めている。
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