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Thursday, September 15, 2022

アラビアの砂漠で先史時代の狩猟の証拠となる建造物を発見(2022年9月15日)|BIGLOBEニュース - BIGLOBEニュース


 オックスフォード大学考古学研究所の考古学者たちが、衛星画像を利用して、サウジアラビア東部とイラク南部に広がる「カイト」と呼ばれる、大古の狩猟用建造物350以上をマッピングした。
 マイケル・フラッドリー博士率いる、東・北アフリカの絶滅危惧考古学プロジェクト(EAMENA)の研究チームは、様々なオープンソースの衛星画像を利用して、これまであまり研究が進んでいなかった、東ナフード砂漠周辺を丹念に研究した。
 『Holocene』誌に掲載されたその驚くべき結果は、紀元前紀元前9000〜4000年にさかのぼる、中東の地域の結びつきと気候変動について、これまでの私たちの理解を変えてしまう可能性があることが明らかになった。
・新石器時代に狩猟につかわれていた建造物「カイト」
 航空機のパイロットによって「カイト(凧)」と名づけられたこれら建造物は、低い石壁でできた囲いと、ときに何キロにもわたって続く多くの誘導壁で構成されている。
 これらは、ガゼルのような獲物を追い込んで、捕獲または屠殺するためのものと考えられている。
 この建造物は新石器時代にさかのぼるものである証拠があるという。
「カイト」全体は、地上からは簡単に観察することはできないが、商業衛星画像、グーグルアースなどのプラットフォームの登場によって、最近、新たな分布地が発見されるようになった。
 これら構造物の存在は、ヨルダン東部やシリア南部の隣接地域ではすでによく知られていた。・これまで知られていない地域でカイトが広く分布
 だが、今回の成果によって、サウジアラビア北部のさらに東400キロ以上にわたっても分布していることがわかった。さらにイラク南部でも、初めて特定された。
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調査地域で発見された様々なカイト / image credit:journals.sagepub
 フラッドリー博士は言う。
今回、我々が発見した構造物には、丁寧かつ精巧に設計された痕跡が見られました。
「カイト」の頭部分は100メートル以上の横幅があり、ガゼルなど獲物が、その頭部分へ追い込まれるときにたどる「カイト」の"ひも"に当たる誘導壁は、とてつもなく長いのです。
中には、現存する壁が、ほぼ直線で4キロ以上も続いている例もあります。これら建造物が、どのように設計・建設されたのか、その驚くべき技能の高さを見せつけているのです
 このような遺構から、何世代にもわたって「カイト」を建設、維持、再建し、狩りをして屠殺した獲物の遺骸を、集落やキャンプに持ち帰って保存するために、かなりの資源を調整する必要があったことがわかる。
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新たに発見された複数のカイト / image credit:journals.sagepub・カイトにそれぞれの独自性、縄張り意識の表れか
 この遺構のかなりの大きさと形状は、地位や独自性、縄張り意識を表わしたものだった可能性があるという。
 ヨルダンで見つかった岩絵に「カイト」が登場するのは、新石器時代のこの地域の人々の象徴的、儀式的な領域において、この建造物が重要な位置を占めていたことを示している。
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ヨルダン東部の典型的な「カイト」の航空写真/ image credit:APAAME
「カイト」の頭部分の設計から、遠くまで伸びる誘導壁まで、これら構造物は、完新世時代初期のほかの建築とは、かなり異なる規模で作られている。
 「カイト」を作った人たちは、現代の衛星画像データには写っていない、有機物で作られた仮設建築物に住んでいたのかもしれないと、専門家は言う。
 今回、新たに見つかった「カイト」は、これまで知られていなかった、これらが建てられた当時のアラビア北部全土のつながりを示している。
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新たに発見されたカイトの一例 / image credit:journals.sagepub・現在砂漠となっているこのエリアは温暖な気候だった
 この建造物は、誰が作ったのか、捕えた獲物は誰に食べさせるつもりだったのか、人々は生き延びただけでなく、こうした建造物にどうやって投資することができたのか、といった興味深い疑問が次々にわいてくる。
 新たにわかったこうしたつながりの観点から、星型をした「カイト」の分布は、ナフード砂漠周辺というより、むしろ砂漠の中でつながりがあったことを示す、初めての直接的な証拠といえよう。
 現在は砂漠になってしまっているこのエリアが、現在よりもより良好な気候のもとで、人間や野生動物の移動を可能にしたことの重要性を示している。
 「カイト」が作られたのは、完新世時代(紀元前9000〜4000年)の、もっと湿潤で緑の多い気候だった頃だったと考えられている。
 もっとも多くの「カイト」が作られたのは、ナフード砂漠のアル・ラバ高原だが、ここにはのちの青銅器時代の埋葬墓がない。
 このことから、この時代には、もっと乾燥した気候に移り変わり、かつてここを利用して生活していたコミュニティを支えるには限界がきたことを示している。
 こうした気候変動によって、狩猟対象の獲物もいなくなってしまったのではないかと考えられる。
 空間と時間をこえた「カイト」の建設様式が、人々の思想の動き、またはその移動の方向を表わしているのかどうかについては、まだ答えは出ていない。
 このプロジェクトは現在、こうした景観や気候変動の影響をより理解するために、乾燥地帯全域に範囲を広げて調査を行っている。
References:Archaeologists discover monumental evidence of prehistoric hunting across Arabian desert/ written by konohazuku / edited by / parumo

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