事件現場に残された指紋や足跡を調べて容疑者を絞り込む鑑識。その第一線で約30年間活躍した府警鑑識課補佐・大野裕嗣警部(64)が今月末で退職を迎える。立ち会った現場は4000か所以上。地道な捜査も決していとわず、いくつもの難事件を解決に導いてきた。(高木文一)
河内長野市出身。TVドラマの刑事に憧れて高校卒業後の1975年に警察官になり、黒山署で約6年半勤務した。殺人など凶悪犯罪の容疑者を追う捜査1課の刑事を目指していたが、告げられた異動先は希望と異なる鑑識課。それが生涯の仕事になった。
大事件の現場検証を担う機動鑑識係に配属された。「技術は目で盗め」「プロは100点取って当たり前や」。職人気質の先輩たちは厳しかったが、知識や技術を身につけていくたび、鑑識の奥深さを知り、やりがいを感じるようになっていった。「現場で証拠を採取できるかできないかで、被疑者特定や事件解決が大きく左右される。この道を究めたい」。そう心に決めた。
2010年2月、河内長野市のマンションの一室で住人の女性が浴槽内で遺体で発見され、部下を率いる班長として駆け付けた。
現場の状況から、当初は「事件性は薄い」と見られていたが「部屋にあった時計や財布がない」と遺族が話すのが気になった。女性の額には傷もあった。「何かあるかもしれない」と上司に直談判して捜査を進め、4日目に寝室のカーペットから緑色のガラス片を見つけた。
その後の捜査で女性が瓶で殴られた可能性が浮上し、数日後、女性に借金していた男が強盗殺人容疑で逮捕された。女性と口論になり、一升瓶で頭を殴って浴槽に沈めたという。「先入観にとらわれない地道な捜査が実を結んだ」と振り返る。
大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件(01年)、大阪市浪速区の個室ビデオ店での放火殺人事件(08年)など様々な現場を経験。09年には優れた捜査技能や知識を持つ「府警技能指導官(現場鑑識)」に選ばれた。
ベテランになっても現場にこだわり、培った技術や経験を後輩らに伝えてきた。鑑識課在籍(再任用期間含む)は実に29年半にもなる。退職を目前に控え、「無駄に思える作業をいとわないのが鑑識のプロ。地道な努力もいつかは報われる。その『いつか』に向けて精進を続けてほしい」と呼び掛ける。
「第二の人生」の目標は、長年支えてくれた妻への恩返しだという。「あとは後輩たちに託し、嫁さん孝行に専念します」とほほ笑む。
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