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Monday, February 7, 2022

社説(2/8):民事訴訟の期間制限/6カ月結審 拙速な審理懸念 - 河北新報オンライン

 法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、民事裁判を7カ月以内に終える新たな手続きの創設を提示した。

 裁判に要する期間を予測できるようにし、利用しやすくするのが狙いだ。答申を経て、法務省は民事訴訟法などを改正し、2025年度の施行を目指している。

 民事訴訟の一審の審理期間は平均10カ月弱。1年以上かかるケースも多い。訴訟の長期化が当事者の負担になっており、訴訟の迅速化は検討すべきであるが、期限ありきの拙速な審理にならないか懸念が残る。

 新たな訴訟手続きは、当事者の申し出や同意に基づき裁判所が適用を決める。裁判長には口頭弁論や争点整理などの審理を最初の期日から6カ月以内に終了し、その後1カ月以内に判決を言い渡すことを義務付けた。

 当事者間で事前折衝があり、互いの主張や証拠が明らかで争点が少ない事案なら、時間短縮は可能だろう。企業側には訴訟に要する時間の短縮に伴い、コストの削減も見込めることから歓迎する意見が多いという。

 ただ、当事者双方の証言が食い違い、主張に隔たりが大きく、折り合いがつかなくなったから、裁判に持ち込むのである。あらかじめ期間を制限すれば、双方が主張を展開する時間を十分に確保できず、証拠の吟味も足りないまま時間切れになりかねない。

 その結果、審理や判決が粗雑になり誤判の恐れが増し、ひいては憲法が定める公正で適正な裁判を受ける権利を侵害しかねないとして、複数の弁護士会は手続きの導入に反対する声明を出している。

 法制審の部会でも、時間の制約は、証拠をそろえる態勢が劣る側に不利に働くとの指摘があった。問題提起を受け、個人が企業を相手に提訴することが多い消費者契約と労働関係紛争を巡る訴訟は対象から除外した。

 裁判の迅速化は法曹界が長年抱える課題だ。現状は原告と被告、裁判官の日程調整が難航し、進行協議や口頭弁論が2~3カ月に1度しか行われないこともまれではない。尋問に出廷する証人の都合も考慮しなければならない。

 裁判官の担当事件が多いため、期間限定の訴訟を優先し、それ以外は後回しにされ、さらに審理が長期化する弊害も排除できない。

 審理期間の短縮は、裁判官の増員や当事者が裁判に必要な情報や証拠を収集する手続きの拡充など、環境整備に合わせて取り組んでこそ、確実な実現が期待できよう。

 新たな手続きには、訴訟当事者が申し出れば、期間を制限しない通常の手続きに移行できる規則を設けた。審理過程で新たに証拠が見つかり、裏付けに時間を要する場合などが想定される。主張を立証する権利を損なうことがないよう、柔軟な運用を原則とすべきだ。

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