東京地裁で提訴から10年続く民事裁判がある。「カルテがないC型肝炎訴訟」。国は2008年、汚染された血液製剤が原因でC型肝炎となった患者の「一律救済」を打ち出したが、カルテがない患者にとって血液製剤投与の立証は高い壁に阻まれたままだ。原告たちは代わりとなる証拠を探し続けている。
夫「苦しむ妻が忘れられない」
「国に言いたいことはきりがない。補償すると言ったではないか」。8月3日、東京地裁706号法廷。妻(当時63歳)を肝がんで亡くした神奈川県藤沢市の原告男性(71)は本人尋問で、国への怒りをあらわにした。
妻は1977~81年に3人の子供を出産し、いずれの時も大量出血した。約4年後、勤務先の健康診断をきっかけに肝炎の罹患(りかん)が判明。次第に仕事から帰宅すると寝込むようになり、肝がんへと悪化した。
64~94年に出産時の止血剤として使われた血液製剤「フィブリノゲン」にウイルスが混入し、多くのC型肝炎被害者を生んだ。被害者が全国で起こした集団訴訟を経て、08年に「早期の一律救済」を掲げた救済法が議員立法で成立。国に裁判を起こし、和解などで給付対象と認められれば1200万~4000万円が支給される仕組みができた。
「自分も血液製剤を使われたのではないか」。妻も裁判を起こそうと、子供3人を出産した2病院に問い合わせた。だが、カルテは既に廃棄されていた。
和解に至るのはカルテがあったり、医師ら医療従事者が証言したりするなど、血液製剤投与と肝炎発症の因果関係がある場合に限られる。次男の担当医は開業して病院を離れていた。探し出して話を聞くと、「大量出血時には止血剤を使うように病院内で通知が回っていた。血液製剤が使われた可能性がある」と教えられた。11年5月、この証言を頼りに、集団訴訟の一員に名を連ねた。
だが、国はカルテがないことを理由に「血液製剤以外の原因で肝炎を発症した可能性がある」と全面的に争った。主張のやり取りが書面で繰り返される中、妻は14年に他界した。…
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