世界遺産の登録を目指す「彦根城」について、滋賀県と彦根市は、登録手続きに必要な推薦書の原案を修正し、文化庁に提出した。彦根城を「200年以上にわたって安定した社会秩序を築いた江戸時代の政治体制を物語る傑出した証拠」と位置づけた。
昨年提出した第1稿では「江戸時代の統治の仕組みを代表する」という視点で説明した。「城郭建築の最高点」として先に世界遺産に登録された姫路城(兵庫県)との差別化を図るため、天守以外にも庭園など多くの遺構が現存する利点を前面に出した。
今回は、江戸時代の統治を、世界遺産に求められる世界基準の普遍的価値で再検討した。
江戸期の政治体制(幕藩体制)は、分権的でかつ全国的に標準化されていた。それは「世界的に見ても独特な政治体制」で、安定した社会を実現させた。彦根城は藩(地方)の政治拠点の一つで、全国諸藩のモデルにもなったと位置づけた。
天守や庭園などの遺構はバラバラのものではなく、空間的にも視覚的にも一つの固まりとして意味があるとした。建物だけでなく、城域全体を説明するため、新たに「建築土木装置」という言葉を使った。江戸期の城は、戦闘ではなく統治に使われた特殊性もある。
建築土木装置には、二つの特質があるという。
一つ目は「階層的な配置・平面計画」として、上空から見た平面的な城郭に着目した。二重の堀と石垣で区切った同心円状の区画の中に天守や各屋敷を配置し、大名を頂点とする階層的な組織構造を示した。
次に「視覚的な象徴性」として、横から見た城郭にも注目。城山にある天守や櫓(やぐら)は、藩の自立した権力を示した。堀や石垣は内外を明確に区切り、特別な空間であることを現した。
この建築土木装置は、彦根城などをモデルに全国的に標準化されたが、多くが明治以降に取り壊された。そんな中、彦根城は住民の強い願いで例外的に守られたという。天守や櫓、庭園などが一体となって現存し、「最もよく保存された見本」とした。
また、世界的な視点として、中国大陸で清が建国されるなど、当時の国際情勢を反映させた。江戸時代を「東アジアの政治的混乱を克服して安定した秩序が作られた歴史上の段階」と位置づけた。
推薦書を出す際に必要な「包括的保存管理計画」も初めて作成した。これは、彦根城などの資産と周辺環境を守るための計画書だ。
提出は3月末。国の文化審議会でのヒアリングを経て推薦書を完成させ、来年の国内推薦、24年の登録を目指す。登録は1年に1件だけだが、奈良県の「飛鳥・藤原の宮都(きゅうと)とその関連資産群」も同じスケジュールでの登録を目指している。(筒井次郎)
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