冤罪(えんざい)被害者や日本弁護士連合会などが求める再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正について、全国で少なくとも49市町村議会が速やかな法改正を国に求める意見書を可決した。大半が改正の要望項目として(1)検察官が持つ証拠の全面開示(2)再審開始決定に対する検察の不服申し立て(上訴)の禁止・制限-を盛り込んだ。改正を求める市民団体は「地方からの声をさらに広げ、動きが鈍い国を動かしたい」としている。
再審無罪となった東京電力女性社員殺害事件(1997年、東京都)や布川事件(67年、茨城県)などでは、検察が「不存在」と説明していた無罪方向の証拠の存在が後に明らかになり、捜査機関による「証拠隠し」と批判された。背景には、再審請求審では証拠開示に法的規定がなく、開示勧告を検察側に出すか否かが裁判官の裁量に委ねられ、裁判官次第で証拠が埋もれたままになる「再審格差」の問題が指摘される。
また、再審請求審で再審開始の決定が出ても、検察の上訴により上級審で決定が覆され、数十年にわたって再審公判にたどり着けない事件も目立つ。
法改正を巡っては、冤罪被害者や弁護士、刑事法学者などが2019年に、「再審法改正をめざす市民の会」を結成。意見書可決を地方議会に求める陳情活動は日本国民救援会が担った。その集計を基に本紙が取材した結果、「証拠の全面開示」「検察官上訴の禁止・制限」の2項目改正を求めたのは東京都小金井市や大阪府吹田市など42議会。
要望理由として、島根県津和野町議会は「無罪となった再審事件で『新証拠』の多くを、実は検察が隠し持っていた事実に心が凍る恐怖を覚える。無罪証拠が当初から開示されていたら、冤罪は生まれなかった」と指摘。茨城県那珂市議会は「大崎事件(1979年、鹿児島県)、袴田事件(66年、静岡県)では検察官上訴で再審開始決定が取り消され、再審請求審が無用に長期化している。日本の再審規定のルーツであるドイツは、50年以上前に検察官上訴を禁じている」とした。
また、奈良市など4議会は「証拠の全面開示」を要望。北海道苫小牧市など3議会は、改正項目は明示せずに法改正を求めた。49議会とは別に、神戸市議会は「国民に開かれた再審制度に向けた審議促進を求める意見書」を可決した。
市民の会共同代表で、元東京高裁裁判長の木谷明氏は「再審制度が十分に機能していない根本原因は、審理の進め方を何も規定していない法の不備にある。特に証拠開示と上訴禁止、再審手続きの整備は喫緊の急務。地方から社会の関心を高めたい」と語った。 (編集委員・中島邦之)
【ワードボックス】再審 再審は2段階からなる。第1段階は「再審請求審」と呼ばれ、非公開。有罪が確定した人が裁判所に申し立て、新証拠と旧証拠を総合的に評価して確定判決に合理的な疑いが生じれば、第2段階の「再審公判」へ。公開の法廷で通常の裁判と同様に証拠調べを行い、改めて判決が言い渡される。第1段階で再審開始決定が出ても、検察の上訴により上級審で決定が覆れば再審公判は始まらない。
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