ゆうちょ銀行の口座から電子決済サービスを通じて不正に貯金が引き出された問題で、被害者への補償や情報開示が後手に回るなど対応のまずさが際立っている。親会社の日本郵政は、保険商品の不正販売で自粛を続けてきたかんぽ生命保険の営業再開を決めたばかり。その直後に問題を隠蔽(いんぺい)するかのような対応を繰り返し、日本郵政グループへの信頼はさらに失墜した。 「リスク感度が非常に鈍かった」。24日の記者会見で池田憲人ゆうちょ銀社長は情報開示の遅れについて、背景に問題を矮小(わいしょう)化しようとする組織体質があることを認め、謝罪と釈明を繰り返した。 NTTドコモの決済サービス「ドコモ口座」を経由した被害が8日に全国の銀行で続々と発覚すると、ゆうちょ銀も被害を認める一方、件数や金額は公表しなかった。10日には総務省にドコモ口座以外でも被害が発生していることを報告したが、15日の閣議後会見で高市早苗前総務相に指摘されるまで対外的に伏せていた。 一方、同じ時期に自行のキャッシュレス決済サービス「mijica(ミヂカ)」でも不正送金被害が発生。8月8日の最初の被害確認から9月23日まで1カ月以上も問題を公表せず、被害の拡大を招いた。 一連の不正引き出しの全体像は24日の池田社長会見でようやく示された。被害は約3年前から発生しており、ドコモ口座など提携先の決済サービスで昨年以前に発生した被害は3分の1程度しか補償が済んでいないことも判明した。 日本郵政グループではかんぽの不正販売に続き、情報開示に消極的な姿勢が再び露呈した格好だ。政府から「(不正に)気付くのが遅かったのではないか」(麻生太郎金融相)、「企業統治を徹底的に見直すべきだ」(武田良太総務相)など批判が相次いでいる。
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