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Sunday, August 23, 2020

連続最長更新の安倍政権「4つの秘訣」と「光と影」 残り任期で“政権レガシー”築けるか正念場に - www.fnn.jp

連続在任で史上最長を更新

第二次政権発足・2012年

8月24日、安倍晋三首相の第2次政権発足後からの在任日数が2799日となり、去年の通算在任記録更新に続き連続在任記録でも佐藤栄作氏を抜いて歴代最長になった。2012年12月、自民党の政権奪還に伴い総理大臣に返り咲いてから約7年8ヵ月、第二次安倍政権は様々な課題に取り組み、賛否を巻き起こしながら歩んできた。

佐藤栄作氏

例を挙げれば、アベノミクス、地球儀俯瞰外交、安保法制、社会保障改革、森友加計問題、そして現在の新型コロナウイルス対策など、枚挙に暇が無い。そこでこの最長政権が成し遂げた光の部分と、様々な批判や課題を背負った影の部分を改めて振り返ると共に、何が長期政権を実現させたのかを探り、安倍政権はこれから何に挑んでいくのかを展望する。

“もう失敗しない!”第二次政権発足当初の高揚感

「本日、第96代内閣総理大臣を拝命いたしました。今回の総選挙の中において、全国を遊説で回りながら、国民からの期待として、この政治の混乱と停滞に一日も早く終止符を打ってもらいたい、そういうひしひしとした期待を感じました。一方、まだまだ我が党に対して、完全に信頼が戻ってきているわけではない、政治全般に対する国民の厳しい目が続いていることを実感いたしました。その中で、内閣を発足し、一日も早く結果を出していくことで信頼を重ねていきたい、信頼を得ていきたい、そういう緊張感で今いっぱいであります」

安倍首相就任会見・2012年12月26日

2012年12月26日、第二次政権の発足にあたっての記者会見で安倍首相はこのように切り出した。「危機突破内閣」として「経済再生・復興・危機管理」に全力で取り組むこと、「国益を守る、主張する外交を取り戻すこと」を強調し、結びには再び経済について語った。

「この政権に課せられた使命は、まず、強い経済を取り戻していくことであります。人口が減少していくから成長は難しい。確かに難しい条件ではありますが、成長をあきらめた国、成長していこうという精神を失った国には未来はないと思います。我々は、決断し、そして、正しい政策を実行することによって成長していく。明るい未来を目指して国民一丸となって進んでいく国づくりを目指していきたい」

この第二次政権発足当時、安倍首相自身や、首相返り咲きを支えた盟友や側近たちからは強烈な高揚感がひしひしと感じられた。政権運営の拙さと参院選での大敗に伴う「衆参のねじれ」、そして体調不良によって退陣に追い込まれた第一次政権の悔しさを胸に失敗を繰り返さないという強い覚悟、臥薪嘗胆の中で練り上げた経済再生や外交のビジョンをいよいよ実行に移すという自信も垣間見えた。そうした熱量が、長期政権の礎になったことは間違いない。

第二次安倍内閣発足

長期政権の秘訣1 「経済最優先」の強み

そして長期政権を支えた最大の要素は経済だ。「安倍内閣は経済最優先であります」。ことあるごとに安倍首相や菅官房長官が繰り返したこの言葉の効果は大きかった。株価は、安倍内閣成立を見越し、政権発足前から上昇していたが、自ら起用した黒田日銀総裁と協調し、経済界とも密接な関係を構築しながらの「3本の矢」に基づくアベノミクスは、さらに株価を押し上げ景気回復をもたらした。

黒田日銀総裁

第一次政権の失敗は、安倍首相が「戦後レジームからの脱却」「美しい国」などの国家像に重きを置きすぎたためだとの指摘が一部であったが、そうした反省の上に立つかのように、経済再優先をアピールした効果はてきめんだった。

一方で、アベノミクスは貧富の差を拡大させた、都市と地方の格差を広げたという批判も常について回った。株を持つ人や会社が恩恵に預かった一方、中低所得者は給料が上がっても物価も上がっており生活は苦しくなっていると批判を受けることもあった。

それだけに安倍内閣も最低賃金の底上げなど格差緩和に積極的に取り組んできたが、今回のコロナ禍により、経済が大きく落ち込んだことの政権へのダメージは大きい。それでも株価が高値を保っていることは安倍政権のレガシーと言えるかもしれないが、財政出動や金融緩和策に関しては将来へのツケを懸念する声も根強く、将来的にどう評価されるかは今後の経済動向次第と言えそうだ。

長期政権の秘訣2 保守派ながらも“内政リベラル”政策

自民党議員は、若手・中堅の頃に所属した部会や委員会から、建設族・農水族・商工族など様々な「族議員」に分類されることが多い。それでは安倍首相は何族なのか。保守色が強く特定の「族」の印象は薄い感があるが、強いて言えばかつて厚生労働分野の「社会部会」の部会長を務めた経歴が示すように「社労族」だと言える。

安倍首相はその経験に裏打ちされた社会保障政策と、成長戦略をミックスさせたようなある程度リベラル的な政策を打ち出し、それが幅広い支持を受け長期政権の原動力の1つとなった。「働き方改革」「一億総活躍」「女性活躍」「幼児教育・保育無償化」これらの第二次安倍政権の看板政策は野党のお株を奪うような「分配」「包摂」の要素を含むものだ。野党議員が政策的に独自性を示せず地団駄を踏み、民主党政権で閣僚まで務めた細野豪志氏ら「外交保守・内政リベラル」系の複数の議員が、存在意義が薄れたと感じ自民党に身を寄せる遠因になったと言える。

また、安倍首相が保守派の強い支持を受けているからこそ実現できた面がある政策がいくつか存在する。例えばTPP=環太平洋経済連携協定への加盟や外国人労働者の受け入れ拡大だ。仮に民主党政権がこれを推し進めようとしていたら、保守派を中心とした自民党から「日本の伝統や農業などの文化を破壊する」などと猛反発を浴び、安倍政権のような形で実現することはなかっただろう。しかし保守派の安倍首相が、国内向けに、強い日本を作るための経済政策という観点で必要性を主張すると共に、外国と巧みに交渉することで、自民党内の反発は最小限に抑えられ、政策が実現した形だ。

長期政権の秘訣3  “悪夢の民主党政権”よりまし?安定を求めた世論

「我が党は(2007年の)参議院選挙におきまして惨敗をしました(中略)そしてあの悪夢のような民主党政権が誕生しました」

自民党大会で挨拶する安倍首相(2019年2月10日)

安倍首相が2019年の自民党大会で口にしたのが、上記の「悪夢の民主党政権」という言葉だ。民主党政権の一員だった野党幹部たちからは「おごり高ぶりだ、小さい総理だ」「現実が悪くなっているのは今だ」「利権を手放した自民党にとっては悪夢だった」などと猛反発を受けたが、安倍首相は発言の撤回を拒んだ。

撤回を求める立憲民主・岡田克也元副総理・2019年2月

国民の一部からも「レッテル貼りだ」「大人げない」との批判を招いたが、「実際に悪夢の民主党政権だったな」と改めて心に刷り込まれた人も多かった。

このように、安倍政権に不満があろうとも、民主党政権に比べればよほどましだという一定の国民の心理は、安倍政権の支持率を底支えし、選挙の際には切り札として働いた。その結果が、第二次安倍政権下の国政選挙5回において、予想より苦戦した選挙はあったものの、5戦全勝したという事実だ。

旧民主党政権(鳩山元首相・菅元首相・野田元首相)

そのうち2回の衆院解散総選挙は常に早めに「攻め」を意識して仕掛けたものだった。消費増税延期に理解を求めたり、争点が強引だとの批判を受けつつも「国難突破解散」として危機意識に訴えるなど、国民の理解を得やすい設定で勝負したことが勝利につながった。

また対野党戦略としては、「維新」の橋下元大阪府知事や松井大阪市長らと蜜月関係を築き、野党にくさびを打ち込み常に分断を図ったことも、政局運営で有利に働いた面もある。

長期政権の秘訣4 官邸の鉄の結束、準総主流派体制、忠誠誓わせる官僚人事

長期政権の秘訣としてもう1つ欠かせないのが、人間関係と組織運営、そして人事だ。官邸内で安倍首相を最も近くで支える秘書官や補佐官をはじめとする「チーム安倍」の結束は極めて固い。第一次政権での退陣後、失意の安倍首相と共に高尾山に登るなどして結束を高め、再起を期してきたこともよく知られ、安倍首相はこのチームを何より重用してきた。

そして国会議員では、麻生副総理、菅官房長官、甘利税調会長といった盟友ががっちりと政権を固め、派閥幹部である茂木外相、岸田政調会長も政権の屋台骨となって、安倍首相を支えてきた。さらに実力者の二階氏を総務会長・幹事長に起用することで、石破派を除く準総主流派体制を築き、自民党内を掌握したことは、内部からの瓦解を防ぐ上で大きかった。

第二次安倍内閣発足

また、官僚を完全に支配下においたことも長期政権を支えた。第一次政権では、公務員制度改革に踏み込んだりした結果、官僚の様々な抵抗を招いたとも指摘されていたが、第二次政権ではより巧みに霞が関を掌握した。安倍首相―菅官房長官―杉田官房副長官の官邸ラインで各省庁の人事を握り、政権に協力的な官僚とそうでない官僚を峻別し、時には迷わず人事権を行使した。恣意的人事との批判も呼んだが、政権の求心力をアップさせた。

杉田官房副長官と菅長官

一方で、こうした組織掌握が論功行賞などを持って行われたことで、自民党内や霞が関の自由闊達な発言や議論を失わせたとの批判も広がった。このような副作用については、政権退陣後に様々な観点で総括される可能性がある。

長期政権の最大のメリットは外交か

これらの秘訣を原動力に、長期政権となった安倍内閣だが、長期政権のメリットがもっとも見えたのが外交だろう。

新型コロナウイルスの影響で各国の外交が停滞している昨今だが、それ以前の安倍首相は、各国の中でも長期にトップを務める首脳として、国際社会で存在感を発揮していた。「地球儀を俯瞰する外交」を旗印に、世界各国を駆け回り、積極的な経済外交を推し進めた。

「地球儀を俯瞰する外交」中東への外遊・1月

また、アジア外交をめぐっても長期政権ならではの要素が浮かび上がる。中国との関係に関しては、一時の対中包囲網という強硬姿勢と、一帯一路構想への協力など経済面での柔軟姿勢など、硬軟を使い分ける余地が生まれた。北朝鮮に関しても、安倍政権下で独自制裁をかけ、その制裁を緩和するのと引き換えに拉致問題の再調査の約束をとりつけたこともあった。現状は関係が停滞してしまっているが、圧力と対話を使い分けることができるのも、長期政権ならではと言える。

そして日本外交の基軸である日米関係も安倍政権の柱であることは言うまでも無い。民主党政権下では、鳩山首相が中国との等距離外交に言及したり、米軍普天間基地の移設をめぐり迷走したことで関係が悪化し、菅政権でも停滞していた。そして野田首相がオバマ大統領との間で関係を一定程度修復させた時点で安倍政権にバトンタッチしたが、安倍首相は「日米同盟の完全復活」を大々的に打ち出し、日米関係に不安を覚えていた関係者や国民にアピールした。その日米同盟強化の集大成が、国民の約半数が反対・慎重姿勢を示している中で押し切った安保法制の整備であり、トランプ大統領との蜜月関係構築だった。これらの外交の功罪については、今後改めて議論される時が来るかもしれない。

G7訪仏 日米首脳会談(2019年8月)

指摘される長期政権の弊害

しかし、当然安倍長期政権の弊害、影の部分も指摘されている。その最大のものは、森友・加計問題で注目された官僚の「忖度」を生み出すような、政策決定プロセスのゆがみという批判だろう。人事を含め強力な権限を握る官邸の権力者が長期化することで、政治主導が推し進められるというメリットの反面、官僚や与党議員がモノを言えなくなったり、官邸発の政策の「強引さ」、「やり過ぎ」を生んでいるとの声は、霞が関や自民党内から多く聞かれる。

また、「地方創生」「女性活躍」「一億総活躍」「人づくり革命」など、毎年のように看板政策を掛けては替えたものの、成果がいまひとつ見えないとして「大河ドラマ」と揶揄されたこともあった。

さらに予算使途や政策遂行に関して、長期政権の中で本当に有効に使われているのか、政権に関係する人物や団体・特定の関係分野に対して甘くなっているのではないかとの指摘もあった。その1つが「桜を見る会」をめぐる問題であり、大きな問題となった公文書の扱いを含め、政権の様々な場面での強気の姿勢や攻めの対応が、「おごり」という批判を受ける場面も少なくなかった。

「桜を見る会」

難航する「安倍政権レガシー」の構築

こうして、最長政権を迎えた安倍内閣だが、今突きつけられているのは、長期政権のレガシー(歴史的遺産)として何を残せるかだ。

ここに至るまでの政策でもアベノミクスによる経済の一定の復活や、安保法制の整備、全世代型社会保障など、将来につながる業績をあげていると言える面はある。一方で経済については金融緩和や財政出動の副作用が今後生じれば、評価が反転しかねない恐れもはらんでいる。

改憲派集会のビデオメッセージ・5月

その上、未曾有の長期政権だけに、より歴史的なレガシーを求める声も多い。その点、政権の最重要課題だと言い続けて来た拉致問題は進展する気配がない。自らの手で解決するとしてきた北方領土問題を含む日露平和条約交渉も暗礁に乗り上げている。ライフワークの憲法改正についても、世論の理解は一進一退であり、国会での発議に向けた道筋も見えないままだ。

コロナ・経済再生・拉致・北方領土・憲法…残り任期で何を成し遂げるのか

そして今、新型コロナウイルス対応に追われる中、安倍首相自身の健康不安もささやかれている。さらにレガシーの1つになるはずの東京五輪の開催も危ぶまれている中で、今後安倍首相が何を成し遂げていくかは、後世の政権の評価を左右しそうだ。

IOCバッハ会長との電話会談・3月 提供:政府広報室

まず、この状況でなすべきは新型コロナの感染拡大を防ぎつつ、経済を再生させることであるのは言うまでも無いだろう。あまりにも狭い道であるが、政権中枢の「コロナによって日本が経済敗戦国になってはならない」という危機感は本物であるはずだけに、さらなる対策に注目したい。

そして外交については、相手のあることだけに簡単ではないのは誰もがわかっているが、安倍首相は「全ての拉致被害者のご家族がご自身の手で肉親を抱き締める日が来るまで私の使命は終わらない」「平和条約問題について私とプーチン大統領の手で終止符を打つ」という自らの言葉に責任を持って、全力を尽くす必要がある。非常に厳しい状況だが、第二次政権発足当初の意気込みを取り戻し、懸命に取り組むことを国民は望んでいるだろう。

拉致被害者の家族と面会・2019年5月
日露首脳会談・2019年9月

またライフワークの憲法改正を断行するならば、国民に訴えると同時に、連立のパートナーである公明党をまず説得する本気度が求められることだろう。

安倍首相は、第2次政権最初の所信表明演説で次のように力強く述べている。

「私は、かつて病のために職を辞し、大きな政治的挫折を経験した人間です。国家の舵取りをつかさどる重責を改めてお引き受けするからには、過去の反省を教訓として心に刻み、丁寧な対話を心掛けながら、真摯に国政運営に当たっていくことを誓います。今ここにある危機を突破し、未来を切り拓いていく覚悟を共に分かち合おうではありませんか。強い日本を創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です」

現下の厳しい状況の中で安倍首相が、「覚悟」と「真摯」をもって、残りの任期で何を成し遂げ、次の政権に何を残していくのか、日本中が注目している。

(フジテレビ政治部デスク 髙田圭太)

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"それの残り" - Google ニュース
August 23, 2020 at 10:00PM
https://www.fnn.jp/articles/-/76373

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