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Thursday, March 26, 2020

<判決に望む 呼吸器事件再審>(上) 甲南大・笹倉教授に聞く - 中日新聞

甲南大・笹倉香奈教授

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 東近江市の湖東記念病院で二〇〇三年、男性患者の人工呼吸器のチューブを外して殺害したとされる「呼吸器事件」で有罪判決を受け服役した元看護助手、西山美香さん(40)=同県彦根市=の裁判をやり直す再審の判決が、大津地裁で三十一日に言い渡される。検察側は事実上、有罪立証を断念し、無罪判決が確実な状況だが、今後の冤罪(えんざい)撲滅に向けて判決や制度改革に期待する点は何か。識者二人に聞いた。初回は再審制度の問題点について、「えん罪救済センター」に関わる甲南大法学部の笹倉香奈教授(42)に語ってもらった。

◆証拠開示制度を

 再審に関する法律が整備されていないのが、一番大きな問題としてある。再審請求審や証拠開示の手続きをどのように進めるか、曖昧な状況だ。

 再審請求をするためには新証拠が必要だが、(捜査機関が収集した中に)どのような証拠があるのかも分からない。再審請求をする前段階で、証拠開示を求められる制度が必要だ。再審請求審でも、証拠開示がされるかどうかは、担当した裁判官や検察官に委ねられていて、非常に不安定な運用になっている。呼吸器事件でも、これまで出ていなかった(鑑定医が男性患者の死因は他殺ではない可能性を指摘する)捜査報告書が、再審公判の証拠開示で明らかになった。

 米国ワシントン州では、有罪確定後、証拠は公的な資料として情報公開請求の対象となり、誰でも入手できる。米国では、DNA鑑定で無罪になる事件が多く、DNA鑑定ができるような生体試料については、有罪判決を受けた受刑者の求めに応じ、再鑑定を行うという法律がある。

◆民間組織が救済

 米国では、一九九二年に「イノセンスプロジェクト」がニューヨークで始まり、全米に広がった。現在は六十を超える同様の団体があり、DNA鑑定などの手段を用いて、えん罪救済が組織的に行われている。すでに二千件以上の事件で、雪冤(せつえん)を果たしている。冤罪の原因を分析する州の調査委員会や研究データベースなどもあり、実務に生かす、立法を変えるという司法改革が進んでいる。

◆検察も調査 

 検察庁の中にも、冤罪を究明(きゅうめい)、調査する部門が出てきている。検察としても、自分たちが冤罪をつくってきたということに、ちゃんと取り組んでいるということを、社会に見せようとしている。

 この研究をしていて、日本と諸外国、何が一番違うかというと、問題が起こったときにそれに対する取り組み方の態度。海外では同じような類型のことが起こったときに、過去の事件についても共通する問題を検証する動きが出る。日本の刑事司法は、民間企業などに比べて、アカウンタビリティー(説明責任)が欠けやすい。時代の流れから取り残されている。

 判決では事件の手続きの問題点、警察と検察の姿勢についても指摘してほしい。なぜ誤った判決が繰り返されてしまったのか、踏み込んだ言及を期待したい。

 (聞き手・芳賀美幸)

 <ささくら・かな> 甲南大法学部教授。1978年、奈良市生まれ。アメリカ刑事法、米国で民間団体が冤罪の救済を担う「イノセンス・プロジェクト」などを研究。2016年に設立した冤罪被害者を支援する研究者らの団体「えん罪救済センター」に関わる。

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