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Wednesday, June 26, 2024

社説:証拠廃棄促す警察文書 「人権より組織」の非常識 - 毎日新聞

捜査書類の廃棄を促す内部文書の存在が発覚した鹿児島県警本部=鹿児島市で2024年6月21日、吉田航太撮影 拡大
捜査書類の廃棄を促す内部文書の存在が発覚した鹿児島県警本部=鹿児島市で2024年6月21日、吉田航太撮影

 冤罪(えんざい)を防ぐより、組織防衛の方が大切だと言っているに等しい。刑事司法に携わる機関としての常識を疑う。

 鹿児島県警が昨年10月、再審を請求される場合などを念頭に、捜査書類を廃棄するよう促す内部文書を作成し、捜査員らに配布していたことが発覚した。

 「再審や国賠(国家賠償)請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません」と記されていた。

 文書の存在は昨秋にインターネットメディアが報じた。今月になって松村祥史・国家公安委員長が鹿児島県警のものと認めた。

捜査書類の廃棄を促す内部文書の存在が発覚した鹿児島県警本部=鹿児島市で2024年6月21日、吉田航太撮影 拡大
捜査書類の廃棄を促す内部文書の存在が発覚した鹿児島県警本部=鹿児島市で2024年6月21日、吉田航太撮影

 事件や事故の捜査では判断を誤ったり、後に新たな事実が判明したりすることも起こり得る。

 過去の再審請求では、捜査機関が当初の裁判で提出していなかった証拠が明らかになり、無罪につながった例がある。

 滋賀県の病院で入院患者を殺害したとして服役後、再審で無罪となった元看護助手のケースはその一つだ。県警が117点にも上る証拠を検察に送っておらず、その中には元看護助手に有利なものも含まれていた。

 資料が失われてしまえば、捜査の検証は困難になり、真相の解明が妨げられる。恣意(しい)的な取り扱いをするようなことがあってはならない。

 にもかかわらず、今回の文書は、警察にとって都合の悪い情報や証拠を隠蔽(いんぺい)しようとしていると受け取られかねないものだ。

 再審や国家賠償といった人権救済の手続きをないがしろにしていたと言わざるを得ない。

 刑事訴訟法では、警察が犯罪を捜査した際には、速やかに書類や証拠物を検察に送らなければならないと定められている。その趣旨にも反する。

 捜査機関が作成した書類は公文書と位置づけられる。集めた証拠は公共物のはずだ。

 だが、文書は「適正な捜査」を推進するための執務資料として作られており、組織の論理を優先する体質がうかがえる。

 裁判の公正を期すには、あらゆる証拠を検討することが欠かせない。捜査資料を適正に保管・管理するルールづくりが急務だ。

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