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Monday, June 17, 2024

二人の少女が惨殺された「福岡の事件」でここにきて浮上してきた「まさかの新証拠」の中身(木寺 一孝) - 現代ビジネス

Photo by gettyimages

1992年2月21日、福岡県甘木市の山中で、二人の女児の遺体が発見された。
遺体の服は乱れ、頭部には強い力で殴打されたことを示す傷が残っていた。
二人は、約18キロ離れた飯塚市内の小学校に通う一年生で、前日朝何者かに誘拐され、その日のうちに殺害、遺棄されたものと見られた。

福岡県警は威信を懸けてこの「飯塚事件」の捜査にあたるが、決定的な手がかりはなく、捜査は難航する。そこで警察が頼ったのが、DNA型鑑定だった。さらに、遺体に付着していた微細な繊維片を鑑定することによって、発生から2年7ヵ月後、失踪現場近くに住む56歳の無職の男、久間三千年が逮捕された。

DNA型、繊維片に加え、目撃証言、久間の車に残された血痕など、警察幹部が「弱い証拠」と言う証拠の積み重ねによって久間は起訴され、本人否認のまま地裁、高裁で死刑判決がくだり、最高裁で確定した。しかも、死刑判決確定からわずか2年後、再審請求の準備中に死刑執行されてしまう。

久間は、本当に犯人だったのか。

事件捜査にあたった福岡県警の元捜査一課長をはじめ、元刑事、久間の未亡人、担当弁護士、さらにこの事件を取材した西日本新聞元幹部、記者らに分厚い取材を行ったドキュメンタリー『正義の行方』(監督・木寺一孝)は「ありがちな推断、誘導、泣かせを排斥し、正義を語るに恥じない映像空間が担保されている」作家・横山秀夫氏)、「ここ数年、いや間違いなくもっと長いスパンにおいて、これほどに完成度が高く、そして強く問題を提起するドキュメンタリーは他にない」(映画作家・森達也氏)と各方面から絶賛されている。ドキュメンタリーは木寺氏の著書として書籍化もされ、本年度の講談社本田靖春ノンフィクション賞の最終候補作品となっている(最終選考会は7月18日開催)。

ここでは5月23日に行われた映画公開舞台挨拶の模様をお届けする。

『正義の行方』(木寺一孝/講談社)

それぞれの正義のぶつかり合い

〈木寺氏の冒頭挨拶〉

この作品についてそれぞれのご感想を持っておられると思うんですけれども、私自身の作り手の気持ちとしては、この作品はゴールを決めずに作ったつもりで、もちろん飯塚事件が冤罪だと一方的に述べるつもりもありませんし、元警察官、弁護士、メディアの方、久間さんの奥さんそれぞれが考える真実、それぞれの正義を突き合わせることで、ご覧になった方の中でどのような化学反応が生まれるか、それを提示する映画になっています。

自分がもし警察官だったらああいう捜査に加わったときにどうしただろうかとか、あるいは新聞記者だったら、あのとき自分はスクープを打っただろうかとか、そうした組織人としてどう振る舞うかという見方をしてもらってもいいと思っていますし、自由にご感想を持っていただければと思って作りました。

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〈以下質疑応答〉

――ネットでいろいろ調べたんですけど、あの女の子が二人乗せられていた白いワゴン車の話というのは、本当の話なんですか。

弁護団が第二次再審請求で提出した、新証拠のことですね。

事件の日、まさに久間三千年元死刑囚が持っているものと同じ車、似たような車が、八丁峠で午前11時に目撃されているんですが、木村さんという、福岡の郊外に住んでいる電気工事会社の社長が、同じ時間帯に福岡市に向かうバイパスで、若い少しひ弱な感じの男性が、白いバンの中に小学生を二人乗せているのを目撃したと。

それを当時気になって警察には通報したらしいんですが、ちゃんとした捜査がなく、ずっとやり過ごしていた。

その後も裁判に通って久間さんを見て「この人じゃないな」と思ったりして、長い間葛藤した気持ちといいますか、あのときなぜ自分は通報しなかったのか、ずっと悩みを持ってらっしゃったんですが、今回新証拠の証人として再審の弁護団に通報したという流れなんです。

いろんな目撃証言があります。警察側の証言としても、連れ去り現場でダブルタイヤを見た、八丁峠で紺色のダブルタイヤの車を見たという。本当に見たのかは本人の頭の中にしかないので、目撃証言というのは非常に難しいものだと思っています。

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