トランプ前米大統領(77)による不倫口止め料の会計不正処理事件の公判は28日、ニューヨーク州地裁で最終弁論が終了し、結審した。検察は「政治や報道といった騒音を排除し、証拠に基づき判断してほしい」と陪審員に訴えた。トランプ氏側は改めて無罪を主張した。12人の陪審員は29日、判事から説明を受けた後、有罪か無罪かを話し合う評議に入る。

評議は非公開で、評決までどれだけ時間がかかるかは不明。有罪の場合、判事が量刑を後日言い渡す。無罪となれば検察は上訴できず確定する。他に起訴された議会襲撃など3事件は審理の見通しが立たず、11月の大統領選までに評決が出るのは今回の事件だけになる公算が大きい。

トランプ氏は2016年大統領選の直前、06年に不倫関係にあったと訴える女性への口止め料として13万ドル(約2千万円)を元腹心で顧問弁護士だったコーエン氏に立て替えさせたとされる。17年に弁済した際、一族企業の帳簿で「法務費用」と偽ったとしてニューヨーク州法に違反した罪に問われている。

検察は大統領選前に不利な情報をもみ消し「有権者を欺こうとした」と指摘。コーエン氏がトランプ氏の指示で口止め料を支払ったと証言しており、他の関係者の証言や通信記録からもトランプ氏が口止めと弁済に関与していたことは明らかだと強調した。

弁護側は、口止め料支払いはコーエン氏の独断で、証言に矛盾があり信用できないと主張。金銭を目的にトランプ氏を陥れようとしているとして「史上最悪のうそつきだ」と批判した。コーエン氏への支払いについては、弁済ではなく顧問弁護士としての正当な法務費用で、不正な会計処理はなかったと繰り返した。(共同)