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Saturday, July 29, 2023

未払い残業代を取り戻せ 足りない証拠、立証した弁護士のひらめき:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 タイムカードなどの証拠がなくても、未払い残業代の請求は認められるのか――。そんな訴訟で画期的な判決が6月、福岡地裁小倉支部で言い渡されました。その裏に、労働問題に長年取り組む弁護士と、原告となった競り人らの二人三脚の闘いがありました。

 新鮮な青果や魚介類が運び込まれ、「北九州の台所」とも呼ばれる北九州市中央卸売市場。場内では早朝から威勢のよいかけ声が響き渡る。競りで商品を買い付け、スーパーなどに届ける青果仲卸会社のひとつが2021年3月、ひっそりと廃業した。

 経営者から30人ほどいる従業員に説明があったのは、その年の1月。会社が解散するわずか2カ月前のことだった。

 「売り上げが落ちてきた。給料を払えるうちに閉めたい」。会社側の資料によると、卸し先である大型スーパーが倒産したり、流通システムが多様化したりして、90年代に50億円超あった売上高は近年3分の1ほどに減ったという。

 会社の説明からまもなく、従業員のひとりが地元の労働組合に駆け込んだ。競り人補助の山本崇満(たかみつ)(42)だ。

 1人でも入れる全国一般労働組合福岡地方本部(北九州市)の委員長、山岡直明(64)が相談に乗った。「借金のない会社をつぶすことなんてできるんですか」。山本はそう訴えた。

 山岡が話を聴いてみると、問題は山積していた。まず、残業代が支払われていなかった。年次有給休暇も取れていなかった。さらに、退職金に関する規定を見た従業員もいなかった。

 「他にも不満を抱えている従業員がいるはずだ」

 山岡の言葉をうけて、山本はほかの従業員にも声をかけた。すると15人ほどが集まった。労組を結成することにした。

 会社に団体交渉を申し入れた。廃業に関する意向の確認や残業代の支払いを求めるためだ。だが交渉は進展することなく、会社は3月末で廃業した。

証拠はわずか 裁判はできるのか

 5月の大型連休明け、山岡は山本ら10人ほどを連れ、JR小倉駅近くのナリッジ共同法律事務所に向かった。ここは、九州の労働運動の礎を築いた故・谷川宮太郎が立ち上げ、多くの訴訟実績がある。

 応対したのは弁護士の安元隆治(44)だ。未払い残業代の請求を含めて労働事件の経験は豊富。組合員らの説明を聴くとすぐに事件の難しさを実感した。職場にはタイムカードなど労働時間を記録するものはほとんどなかったからだ。

 とはいえ光明はわずかにあった。山本の携帯電話には、社長から翌日の出勤時間を指示するメッセージが毎日届いていた。

 別の一人は退社する際に、妻へ「帰りますよ」と絵文字入りでLINEのメッセージを送っていた。

 だが、それぞれの従業員の出退勤時間の両方を裏付ける資料はなく、ほとんどは記憶から労働時間を推計するしかなかった。

 「裁判はできないんですか」

 迫る山本らに、安元は言った。「残業代に関する労働時間は、従業員が立証しないといけない。だが、証明するものはほとんど何もない。厳しい闘いになる」

原告らの出退勤時間をどうすれば特定できるのか。 安元弁護士が思いついたのは、パズルのような方法でした。

 山本らは悩んだ。「訴訟の労…

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