「大崎事件」再審認めず…福岡高裁支部、弁護側鑑定は「疑いを抱かせる証拠ではない」 - 読売新聞オンライン

　１９７９年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった「大崎事件」を巡り、殺人と死体遺棄罪で懲役１０年の刑が確定して服役した原口アヤ子さん（９５）の第４次再審請求の即時抗告審で、福岡高裁宮崎支部は５日、請求を棄却した鹿児島地裁決定を支持し、原口さん側の即時抗告を棄却する決定をした。 矢数（やす） 昌雄裁判長は「地裁決定に不合理なところはない」と判断した。

　確定判決によると、男性は泥酔して側溝に転落。近隣の住民２人が男性宅へ運んだ後、男性を快く思っていなかった原口さんらがタオルで首を絞めて窒息死させ、遺体を牛小屋の 堆肥（たいひ） の中に埋めて遺棄した。

　第４次再審請求審での最大の争点は死因だった。弁護側は窒息死ではなく、転落が原因の事故死と主張。遺体解剖時の写真などを分析した救命救急医の鑑定を新証拠として提出し、男性は転落で 頸髄（けいずい） を損傷するなどし、男性宅に運ばれた時にはすでに死亡していた可能性が高いとした。

　昨年６月の地裁決定は鑑定について「写真という限定的な情報に基づく推論」などとして「決定的なものとはいえない」と退けた。高裁支部も同様に「確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせる証拠ではない」と判断した。弁護側は最高裁に特別抗告する方針。

　事件を巡っては、原口さんは一貫して無実を訴え、第１次請求の地裁、第３次請求の地裁と高裁支部が再審開始を認めたが、いずれも最高裁などが取り消した。第４次請求は、脳 梗塞（こうそく） や認知症で入院中の原口さんに代わり、原口さんの長女（６８）が２０２０年に申し立てた。

　◆ 大崎事件 ＝１９７９年１０月、原口さんの義弟だった中村邦夫さん（当時４２歳）の遺体が自宅そばの牛小屋で見つかり、原口さんと、元夫ら親族３人（いずれも死去）が殺人や死体遺棄の罪で起訴された。原口さん以外の３人は起訴事実を認め、懲役１～８年が確定。物的証拠に乏しい中、原口さんは一貫して無実を訴えたが、原口さんの関与を認めたこの親族３人の供述などが証拠の柱となり、８１年に懲役１０年が確定、服役した。

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