
明治安田生命Jリーグの2021シーズンは、中盤戦から終盤戦へと差し掛かっている。2度目の連覇を目指す川崎フロンターレとそれを猛追する横浜F・マリノスだけでなく、AFCチャンピオンズリーグ出場権やJ1残留をかけた争いも熾烈を極める。(文:ショーン・キャロル)
●Jリーグはラスト3分の1の戦いに 日本のトップリーグにはどのような目標があって、どのチームがどの目標に向かって戦っているのか。おそらく今季を通して初めて、J1順位表からそういったことをある程度読み取ることができるようになってきた。 2020年と同じく、今季も新型コロナウイルスの影響によって試合日程が大幅に乱されることになった。感染拡大により延期を余儀なくされたこともあったし、集中開催となったACLグループステージに参加するクラブはリーグ戦を前倒ししなければならなかった。結果として、順位表は第3節という序盤戦以来、様々な角度へと歪められ続けていた。 例えば、ある時点では川崎フロンターレが2位に18ポイント差を付けて悠々と連覇へ向かおうとしているように見えたこともあった。ほんの数週間前には19位に沈んだガンバ大阪が本格的に残留争いを戦わなければならないようにも見えていた。 もちろん、これらは実際の状況を正しく反映したものではなかった。クラブごとに大きく異なっていた消化試合数がオリンピック中断の期間中に揃うと、シーズンのラスト3分の1に向けて全く異なる景色が見え始めてきた。 ここまで2敗しかしていない横浜F・マリノスが13戦連続無敗の快進撃を見せたことで、フロンターレは今やわずか1ポイント差で首位を守っている状況となった。ガンバはほぼ安全圏にまで浮上するのに十分な勝ち点を未消化分の試合から確保し、お隣のセレッソ大阪と並ぶ勝ち点30で下部寄りの中位に位置している。 実際に残留争いの激戦が繰り広げられることになりそうなのはその下だ。 ●7チームがわずか10ポイント差 12月を迎えた時点でJ2降格を強いられる4チームとなることを避けるための戦いには大分トリニータ、横浜FC、ベガルタ仙台、徳島ヴォルティス、清水エスパルス、湘南ベルマーレ、柏レイソルが巻き込まれている。 横浜FCはそのグループの中でも長らく最下位に沈んでいたが、状況を変えるべく夏の移籍市場で積極的な動きを見せ、何人かの新外国人選手をチームに加えた。U-24ドイツ代表のGKの一人として東京五輪に参加していたスベンド・ブローダーセンは、第一印象で判断する限りでは非常に効果的な補強となりそうだ。水曜日のガンバ戦での勝利は最下位脱出にも繋がり、チームの心理面に大きな後押しを加えている。 ここから大脱出を完遂できるだけの余力があるかどうかはまだ分からないが、周囲の他チームも安定した結果を残せず苦戦している。早川知伸監督のチームがなんとか白星を拾っていくことができれば、残留ラインとの7ポイントという差は決して埋まらないものではなさそうだ。 実際のところ下位グループはかなりの混戦であり、7チームがわずか10ポイント差の中にひしめいている。フィニッシュラインに迫って重圧が強まるにつれ、どのチームが最も落ち着きを保って自分たちの仕事に集中し続けられるかが重要となりそうだ。 ●ACL争いも大混戦 一方でサンフレッチェ広島、アビスパ福岡、北海道コンサドーレ札幌といったチームはリーグ中位を占め、ある種の無風地帯に位置する。ACL出場権を狙いにいくには遠すぎるが、来季のトップリーグ残留をほぼ安心できる程度の勝ち点は稼いでいる。その上では6チームがミニリーグの様相を呈しており、最後のAFCチャンピオンズリーグ出場枠が懸かる3位の争いは大激戦となりそうだ。 ここでも各チームは(緊急事態宣言下でもさほど変わらない)丸ノ内線の通勤電車さながらに詰め込まれている。勝ち点39のFC東京はやや離されているが、浦和レッズ(44)、サガン鳥栖(44)、鹿島アントラーズ(44)、名古屋グランパス(46)、ヴィッセル神戸(47)の5チームはわずか3ポイント差で3位から7位までを占めている状況だ。 現在経営面で困難を抱えているサガン鳥栖は想定より高いステージで戦っていると言えるとしても、その他のクラブはいずれも、少なくとも来年のアジアの舞台に立つことを最低限の目標としてシーズンに臨んでいたことだろう。残り1つだけの枠を巡って、今後数週間にスリリングな競り合いを期待することができそうだ。 この上位グループの中から1チームしか勝者として戦果を得られないと言い切れるのは、トップの2チームが大きく抜け出しているからだ。現王者のフロンターレと、そのフロンターレに王座から引きずり降ろされた前王者のマリノスがJ1の優勝楯を巡ってマッチレースを繰り広げている。 ●残り12節で待ち受けるドラマ 首位のフロンターレは今季も再び強烈な戦いぶりを見せ、1試合平均2得点以上を奪いつつ失点をわずか17点に抑えて勝ち点63を積み重ねてきた。だが現在はらしくない不調に陥ってしまい、レイソル戦とサンフレッチェ戦のドローに続いて、今週ミッドウィークはアビスパに0-1で敗戦。この夏に欧州へと旅立った田中碧と三笘薫がいかにチームにとって重要な存在であったかが改めて示される形となった。 マリノスも東京五輪直前に大きな存在を失ってはいたが、アンジェ・ポステコグルー監督がセルティックへ引き抜かれようともチームが揺らぐことはなかった。ケヴィン・マスカット新監督の下でも勢いを失うことなく5勝1分けを記録し、最近3試合では14ゴールを重ねてフロンターレの総得点数を上回った。終盤戦のタイトルレースが壮絶な大接戦となる準備は整っている。 通常であれば、全チームが一斉に試合を行って浮き沈みを繰り返すからこそリーグ戦の争いというものは非常に面白くなる。過去1年あまりの日程の混乱は仕方のないものだったとはいえ、来季こそはある程度の日常的な光景が戻ってくることを願いたい。2021シーズンの残り12節も様々なドラマを提供してくれるはずだが、波乱万丈の展開を3ヶ月だけではなく9ヶ月間楽しむことができていれば最高だったに違いない。 (文:ショーン・キャロル) 【了】
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