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Saturday, June 5, 2021

【体操競技】突如、日本代表有力候補に浮上した「杉野正尭」って誰?(椎名桂子) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

本日、高崎アリーナにて開催される「全日本種目別選手権決勝」において、東京五輪の体操競技団体の日本代表選手がついに決まる。

すでに内定している橋本大輝、萱和磨に加え、団体貢献度という基準であと2名の選手が選出される最後の大勝負となるが、「残り2枠」にもっとも近いとされているのが谷川航(セントラルスポーツ)だ。

「団体貢献度」という基準は、非常に複雑でわかりにくいのだが、

●体操競技の団体は、6種目を3人ずつ演技して、その18演技の合計得点がチームの得点となる。つまり、団体選手の4人の中から、それぞれの種目で得点が期待されるほうから3人が演技を行うことになる。

現時点で、橋本大輝、萱和磨が代表に内定しているので、残る2枠には、橋本、萱が苦手としている種目が得意な選手が入ることでチームとしての得点力はアップする。たとえば、橋本が苦手なつり輪、萱が点数を伸ばすのに苦労してきた跳馬、鉄棒などの得意な選手は有利になる。もしくは、橋本、萱の得意種目であっても、さらにそれを上回るくらいの得点力のある選手であれば、その種目でさらなる得点の積み上げで貢献できる。

というような考え方だ。

そのため、今までの代表選考試合での各選手のそれぞれの種目での得点がいわばその選手の持ち点となっており、本日の「全日本種目別選手権」で、各選手はさらに持ち点を伸ばすべく挑戦してくるのだ。通常の大会ならば、「無理をせずノーミスで通すこと」を優先する場合もあるだろうが、今回は違う。

「自分にできる最高難度での最高得点」をみんなが狙ってくる。代表が懸かっている選手はもちろんだが、「種目別日本一」を目指している選手たちもみんなそうだ。

守りに入って勝てる大会ではないのだから。

この「団体貢献度」で、現時点でもっとも代表に近いのが、NHK杯3位で惜しくも代表入りを逃した谷川航(セントラルスポーツ)だ。谷川にはなんといっても跳馬という得意種目がある。さらに、つり輪も強く、チーム得点の穴を埋め、跳馬で得点を上積みできる存在だ。そして、谷川とともに最後の1枠を激しく争っているのが、北園丈琉(徳洲会体操クラブ/清風学園)と杉野正尭(徳洲会体操クラブ/鹿屋体育大学大学院)の2人だ。

北園は、今年の全日本体操選手権ではあわや優勝というところまで駆け上った選手だが、最終種目・鉄棒で大きなアクシデントがあり、優勝を逃した。本来ならば、NHK杯で上位2位までに入っての代表入りの可能性もあった選手だが、それは果たせなかった。

全日本選手権での怪我は決して楽観できるものではなかったというが、それでも、驚異の回復を見せ、今大会でもつり輪、跳馬以外の4種目で決勝進出。さらなる持ち点の上積みを狙っている。

北園はユース五輪でも優勝し、ジュニア~高校時代から注目を集めてきた選手だが、その北園と最後の枠を競っている杉野正尭は、体操ファンの間ではかなり有名で人気も高い選手だが、「五輪でしか体操は見ない」一般の人にまでは知られていないだろう。

大学4年生のときの杉野。あん馬では全日本種目別での優勝経験もある。
大学4年生のときの杉野。あん馬では全日本種目別での優勝経験もある。

正直、現在、代表候補に名前があがっているNHK杯上位10位以内の選手の中では、ダークホース的な存在だったと言っていいと思う。

が、杉野は、驚くほど冷静に、そして虎視眈々とこの機会を狙ってきた選手だ。そして、初めて聞いたときは「夢を語っている」ようにしか聞こえなかった「東京五輪に出る」に向かって着々と実績を積み上げ、本当にここまで来た。その実行力、気持ちの強さにはおそれいるしかない。そして、そんな強さこそは、「五輪」という特別な舞台ではもっとも必要なものだ。

杉野が4年生のとき、鹿屋体育大学は全日本インカレ団体準優勝という快挙を成し遂げた。それも、チームが一丸となって「今までで一番楽しい試合」をやってのけた。それはチームリーダーだった杉野の明るいキャラクターによるものも大きかったと思う。みんなを「いけるぞ!」という気持ちにさせる力をたしかに彼はもっていた。

得意種目のあん馬では、難しい「ショーン(片手での旋回)」を演技後半に入れているのが杉野の特徴でウリとなっているが、なぜ後半に入れることにしたのかと尋ねたとき、「Dを上げていっていたら、流れ的にどうしてもここにしか入らなくて」と杉野は苦笑していた。「でも、後半でさらっとやれたら、余裕をアピールできるからいいかっ、と思って」と言ってのけた杉野は、ピンチをチャンスととらえる力がすば抜けている。

明るいキャラクターでチームを引っ張り、鹿屋体育大学のインカレ準優勝にも貢献した。
明るいキャラクターでチームを引っ張り、鹿屋体育大学のインカレ準優勝にも貢献した。

北園丈琉のことを、内村航平は「五輪の1年延期をもっとも生かした選手」と称していたが、この杉野もまた、この1年を最大限に生かせた選手と言えるだろう。

目の前の目標が次々になくなっていたあの2020年を、ただひたすらに、自分を磨くことに充ててきた。常に上を目指すことをあきらめなかった。

その結果、彼は今、「ここ」にいる。最後の壁は厚いし、高い。

そんなことはわかっている。が、それでもひるまず挑戦するのが杉野だ。

得意種目のあん馬と鉄棒で、「日本代表に必要な選手」だと、彼はきっと証明してみせる。

以下に、過去に杉野選手を取り上げた記事をリンクしておく。興味のある方はぜひチェックしてほしい。

※2020年11月の記事

※2018年8月の記事

※2017年11月の記事

本日、16時20分には全選手の演技が終わる。

そのとき、「日本代表」として名前を呼ばれるのは誰なのか?

注目したい。

<写真撮影:筆者>

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