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実行犯の「遺言」 中村哲さん殺害事件を追う⑤ デザイン・小倉誼之
中村哲さんの殺害事件で、アフガニスタン当局が特定した容疑者の男アミール・ナワズ・メスードが、1月末に死亡した。アミールの死亡について、アフガニスタン当局は取材に応じず、発表もしなかった。
重要証拠を握るアミールの死は、アフガニスタン当局にとって取り返しのつかない失態だった。しかし、アフガニスタン当局が口をつぐむ理由は、それだけではなさそうだった。発表を思いとどまらせるような事情が、他にもあった。
2月10日に朝日新聞が「アミール死亡」を報じてから約1カ月後、事件の捜査を指揮するアフガニスタン情報機関「国家保安局」の関係者と、朝日新聞の助手の一人が話す機会があった。関係者は「アミール死亡」を伝えた記事について、「快く思っていない」と苦言を呈した。「死亡したことも、TTPメンバーだったことも、触れてほしくなかった」。TTPというのは、アミールが所属していたパキスタンのイスラム武装勢力「パキスタン・タリバーン運動」の略称だ。
アフガニスタン情報機関にとって、アミールが死亡したことや、TTPメンバーだったことは、隠しておきたい「恥部」だったようだ。「恥部」が何を指すのかは、アフガニスタン情報機関とTTPの関係性から読み解くと、理解しやすい。
実は、アフガニスタン情報機関とTTPは、仲がいいことで知られている。「反パキスタン政府」という立場で、お互いの考えが一致しているからだ。
アフガニスタン情報機関は、国境線をめぐる対立などから、長くパキスタン政府と対立してきた。アフガニスタン情報機関は一矢報いたいのだが、核保有国のパキスタンと正面からぶつかる力はない。
では、どうするか。最も手っ取り早いのは、「反パキスタン政府」を掲げるTTPのような武装勢力をアフガニスタン領内で飼いならし、潜伏を許すことで、パキスタンへの攻撃を間接的に助けることだ。
情報機関と反政府的な武装勢力が手を握る…。不自然に見える関係性が、アフガニスタンと隣国パキスタンでは成り立っています。中村さん殺害事件の容疑者のアミールも、そうしたなれ合い関係のおかげで恩恵を受けてきたことが明らかになります。
持ちつ持たれつが事件生んだか
私は、中東方面の取材を始め…
からの記事と詳細 ( 二兎を追い、失った証拠と容疑者 当局が隠した「失態」 - 朝日新聞デジタル )
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