アフリカ・アイ、BBCワールド・サービス
東アフリカ・エチオピアの北部地域で集団虐殺があり、同国軍の兵士らが実行者だったことを示す証拠を、BBCが調査によって入手した。少なくとも15人が殺害されたこの残虐行為があった、正確な場所も判明した。
3月上旬、ソーシャルメディアで5本の動画が浮上した。武装した制服姿の複数の男性が、武器を持たない複数の男性を崖の端に連行。至近距離から発砲するなどし、遺体を崖下へ突き落とす様子が映っていた。
BBCアフリカ・アイは、この集団虐殺がエチオピア北部ティグレ州の町マベレ・デゴの近くで実行されたことを確認した。ティグレ州では、エチオピア軍が地域政党ティグレ人民解放戦線(TPLF)の部隊と戦闘状態にある。
両者の戦闘は昨年11月、エチオピア政府がTPLFに軍事攻撃を仕掛けたことで始まった。アビィ・アハメド首相は、TPLFが政府軍の基地を攻撃していると非難。一方のTPLFは、連邦政府の権限拡大に反対し、「さらなる抵抗」を宣言していた。
ティグレ州の暫定政府によると、この戦闘で、これまでに200万人以上が住む場所を失っている。援助が必要な人は400万人を超えているという。
撮影場所を特定
BBCアフリカ・アイの調査報道チームは、メディア「ベリングキャット」と「ニュージー」のアナリストらと共同で、集団虐殺の場所の特定に乗り出した。
動画を最初にソーシャルメディアに投稿した人々は、マベレ・デゴの近くで撮影されたと主張した。アフリカ・アイは、動画に映っている土の道路や丘、特徴的な形状の崖などの地理的情報を分析し、衛星画像と照合した。
動画内の武装男性の影の方向や長さも合わせ、場所を特定。その土地の尾根の形状が、地図情報と一致することも確認した。川の跡や植生なども、特定に役立った。
BBCはマベレ・デゴの男性住民に電話で取材した。住民は、エチオピア軍が今年1月に男性73人を同町周辺から連れ去ったと説明。この住民の親類3人も含まれていたが、全員がその後、行方不明になっていると話した。
BBCはさらに、同町の近くの村の男性住民にも話を聞いた。住民は、兄弟1人が集団虐殺で殺されたと話した。また、虐殺は今年1月にマベレ・デゴで実行されと述べた。
「みんなあの崖で殺された」と住民は話した。
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武装集団と犠牲者
アフリカ・アイは、動画内の武装集団の特定はできなかった。だが彼らの制服は、迷彩の模様や記章の配色などの特徴から、エチオピア国防軍(ENDF)のものとみられる。
ポケットの形状なども、ENDFの制服と一致している。武装集団の1人がかぶっていた緑色のベレー帽の記章は、ENDFのベレー帽の記章と酷似している。
武装集団はエチオピアの主要言語のアムハラ語を話している。5本の動画のうちの最初の1本では、床の上に座っている武器を持たない男性たちの周りで、武器を持った男性らが立ち話をしているのが聞き取れる。
「こいつらを解放してはならない。誰一人容赦すべきではない」と、カメラに映っていない男性が話している。
別の男性は、「どうやって死ぬか撮影しよう」と話している。
続く4本の動画には、非武装の男性たちが銃を向けられながら崖っぷちに連れて行かれる場面が記録されている。また、武装集団が数人の男性を殺し、遺体を崖下へ突き落とす様子が撮影されている。
動画の一部では、武装集団が捕らえた男性たちの体に向けて至近距離から発砲しているのが確認できる。別の場面では、武装集団が死者を侮辱する声が残されている。
映像のフレーム外では、「ガソリンをかけて燃やせたらいいのに」、「それだけの燃料があれば最高だった」などと話しているのも聞こえる。
普段着姿で映っている犠牲者たちは、身元不明だ。ティグレ州で使われるティグリニャ語を話しているのが聞き取れる。動画からは、武装集団が被害者について、TPLFを意味する俗語を使い「これでおしましだ。慈悲など見せない」と話しているのも分かる。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの「アフリカの角」地域ディレクターのレティシア・ベイダー氏は、ここ数カ月間にエチオピアで「非常に深刻な虐待行為」が観察されているものの、今回の動画は「疑いなく特に懸念すべきものだ」と述べた。
「拘束された非武装の男性たちが処刑されている場面だと思われる」、「間違いなく追跡調査が必要だ。動画の内容は戦争犯罪に当たる可能性がある」。
BBCは入手した証拠をエチオピア政府に提供した。政府は声明で、「ソーシャルメディア上での投稿と主張は証拠にはならない」と主張。ティグレ州では「独立した調査を自由に実施できる」と付け加えた。
からの記事と詳細 ( エチオピアで集団虐殺、軍が関与か BBCが証拠入手 - BBCニュース )
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