日に日に暖かさが増して、桜が咲きほこり、初夏のような陽気の日も増えてきた今日この頃。今年は大雪に見舞われた地域でも、スタッドレスタイヤから夏タイヤへ交換するタイミングが到来!
夏タイヤへとバトンタッチした後のスタッドレスタイヤで気になるのは、次の冬もこのスタッドレスを使うことができるのか、ということだろう。
一般的にいって夏タイヤは片減りなどの異常摩耗がなければ、残り溝の深さで使用限界を判断しても大丈夫だが、冬用タイヤはそれほど単純なものではない。
なぜなら氷雪路のグリップ性能は、数十cmの制動距離の差が衝突事故の有無を左右する。最近のスタッドレスタイヤの氷雪性能の高さから、ガチガチになった氷雪路でも不安なく走れる(4WDの恩恵も大きいが)が、それだけにスタッドレスタイヤの性能低下は、氷雪路での走行性能や安全性を大きく低下させる。
そこでスタッドレスタイヤの使用限界はどこで見分けるか、また長く使えるようにするためのコツについて、モータージャーナリストの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカー編集部 ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】スタッドレスタイヤの使用限界はいつ? 見極めるためのポイントを写真でチェック!
残り溝だけでは判断できないスタッドレスの寿命
見た目にタイヤ表面がヒビ割れていたり、明らかに摩耗が進んだ状態、あるいは片減りして摩耗が進んだであれば、もう寿命だと判断することは一般のドライバーでも難しくないだろう。
ヒビ割れているのは、コンパウンド(トレッド用ゴムとして様々な素材が配合されたもの)が劣化している状態であるし、摩耗しているのは、それだけ使って磨り減っているのだから、使用限界が近付いている証拠だ。
そこまで減るには、それなりの年月が経過していることになる。逆に言えば、使用年数も寿命の判断材料の一要素ではある。国産のスタッドレスは劣化防止剤の配合などゴムの劣化を抑え込む技術により、5年程度は新品時の9割程度のグリップ力を維持することが分かっている。
プラットフォームと呼ばれる残り溝が50%になった際にトレッド表面に現れるサインが出るまでは冬用タイヤとして使い、50%以下となったらそのまま夏まで使用して使い切って廃棄するのが、スタッドレスタイヤの正しい使い方だ。
法規的には残り溝1.6mmまでは使用できるので、サマータイヤとして使うことはできる。使用限界は通常のサマータイヤでおなじみの「スリップサイン」が露出するまでだ。
またアジアンタイヤも昔と比べ性能向上は著しく、新品から2、3年は、高い氷上性能を発揮する格安スタッドレスも登場しているようだ。このあたりの情報はネットでの口コミもある程度参考にして、使用年数の参考にするといいだろう。
さて、ゴムの劣化具合は見た目のヒビ割れや摩耗だけでなく、硬度でも判断できる。ゴムの劣化が進んでくるとしなやかさが失われ、硬く脆くなっていく。タイヤ専門店などではゴム硬度計を用意して、測定することで劣化具合を判定してくれるところもある。
ゴム硬度計自体はそんなに高いモノではないから、ネット通販で取り寄せて、自分で測ってみることも可能だが、単に硬度が分かっても、タイヤによって新品時の硬度は異なるので、注意しよう。
それだけでなく、摩耗の仕方にも注意したい。スタッドレスタイヤが氷雪路でグリップを発揮するのはコンパウンドだけでなく、その形状も重要な要素なのだ。トレッドに配置された各ブロックの角、ブロックに刻まれたサイプと呼ばれる細溝の角が丸まってくると、初期のようなグリップ力は得られにくくなる。
これは舗装路を走るほどに進んでしまう症状なので、氷雪路を走行する可能性がなくなったら、すぐに夏タイヤに履き替えて、スタッドレスタイヤの摩耗を抑えることは、単に残り溝の深さだけの問題ではないのだ。
保管状態もその後の寿命を左右する。
夏タイヤに交換した後のスタッドレスを、どこでどうやって保管するか。これが性能の維持には極めて重要だ。なぜならゴムは適度に振動を加えていた方が、弾力性が維持されるという性質がある。
そのため保管しておくより、走行していた方がゴムとしての劣化は少ない場合もあるのだ。つまり保管しておくなら保管環境が大きく影響する、ということを覚えておきたい。
高温多湿の環境は、ゴム分子の加水分解を引き起こし、コンパウンド自体をボロボロにしてしまう。さらに紫外線が直接当たることもやはりゴムの分子を寸断させてしまうから、これらの環境下でタイヤを保管することは、スタッドレスでも夏タイヤでも禁物だ。
日に当たるところでの保管は、例えビニール袋などで覆ってタイヤに直接紫外線が当たらないようにしていたとしても、袋内部の温度が上昇してしまうとタイヤの劣化を早めることになる。
さらにはマンションなどのベランダに保管しておく場合、エアコンの室外機が近くにあるのも要注意だ。コンプレッサーを駆動したり、ファンを回すモーターは、電力を消費するだけでなくオゾン(酸素原子が3つつながった分子)を発生させる。これは極めて酸性度が高く、やはりゴムを分解させてしまう。
室外機とは十分に離して風通しの良い状況にしておくか、タイヤをビニール袋などで密閉しておくしかないが、ビニール袋も同様にオゾンで劣化してしまうので、破けてしまうし、内部に水分などがあったり、日に当たって内部の温度が上昇してしまうと、これもコンパウンドを傷める原因になるので、注意したい。
つまり冷間暗所がタイヤ保管のベストな環境なのだが、一般家庭ではなかなか難しい。タイヤ専門店では、倉庫などでタイヤを預かってくれるサービスを展開しているところも多いから、これを利用するのもいい。
単にタイヤに適した環境で保管してくれるだけでなく、交換時には夏タイヤ、冬タイヤのコンディションをチェックして、交換時期などを判断してくれるから、より安心して冬タイヤも夏タイヤも利用し続けることができる。
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