ワシントンのFRB本部=ロイター
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ゼロ金利政策と量的緩和政策の維持を決めた。記者会見したパウエル議長は「新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念材料だ」と指摘。米国債などの資産購入プログラムを再検証すると表明し、景気リスクが強まれば量的緩和を拡充する可能性を示唆した。
5日のFOMCでは、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%のまま据え置き、事実上のゼロ金利政策を維持した。量的緩和も現在のペースを保ち、米国債を月800億ドル(約8兆3000億円)、住宅ローン担保証券(MBS)も同400億ドルのペースで買い入れる。
米国では4日、新型コロナの感染者数が1日当たり10万人を超えて過去最大を更新した。米経済は7~9月期に年率33%の高成長を記録したが、パウエル議長は感染再拡大を「懸念材料」と指摘。景気回復は「足元で鈍化している」と不安視した。一時14%台まで上昇した失業率は7.9%に下がったが、景気や雇用の完全回復には「極めて長い道のりが必要だ」とも述べた。
FRBは3月にゼロ金利政策と量的緩和を再開して以降、大がかりな追加緩和は見送ったままだ。市場の混乱を抑える臨時の資金供給を優先してきたためだが、新型コロナで景気に「二番底」の懸念が浮かんでいる。FRBはマイナス金利政策には否定的で、追加策は量的緩和をどこまで拡充するかにかかってくる。
パウエル議長は記者会見で「今回の会合では、景気回復を支えるための資産購入策の役割について議論した」と明らかにした。FRBは現時点で、資産購入の目的を「円滑な市場機能を維持するため」としており、実体経済の押し上げ役と位置づけていない。パウエル氏の発言は、資産購入を明確に量的緩和に切り替えて、購入量などを増やす可能性があることを示唆したものだ。
企業家や投資家の最大の関心事は、決着が遅れている米大統領選だ。パウエル氏は記者会見で選挙情勢に言及するのは拒んだが、追加の財政出動があれば「景気回復は一段と早くなる」と述べ、米政権と議会に政策協調を呼びかけた。米政権は当初7月末をメドに追加対策の発動を検討していたが、与野党の対立で成立が大幅に遅れている。
パウエル議長はゼロ金利政策を当面維持する考えも改めて表明した。FOMCの声明文には、ゼロ金利を解除する条件として(1)完全雇用まで労働市場が回復する(2)物価上昇率が2%に達する(3)一時的に物価上昇率が2%を緩やかに上回る経路に到達する――の3つを明示。緩和的な金融政策方針を明確にして市場に安心感を与える「フォワード・ガイダンス」と呼ばれる手法で、9月の前回会合から声明文に3条件を盛り込んでいる。
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