ニューヨークの空港で、Appleの「AirPods」の偽物とみなされたイヤフォンが米税関・国境警備隊に“seize”されたというニュースがあった。差し押さえられたのは「OnePlus Buds」という製品。外箱には自社のブランドが明記され、Appleのロゴを偽装していたわけではないらしい。
US Customs and Border Protection announced that on August 31 it had seized what it said was a shipment of counterfeit Apple AirPods. Based on the photos it shared, the items are actually OnePlus Buds. (CNN)
米税関・国境警備隊は、8月31日に偽物のApple AirPodsだというものを差し押さえたと発表した。共有された写真を見る限り、この品目は実際のところ、OnePlus Budsだった。
動詞のseizeは「つかむ」「捕らえる」などの意味。それも力ずくで、あるいは強制的に奪取したり獲得したりするというニュアンスがこもる。名詞形はseizure。「押収」「没収」「制圧」などの意味に加えて、身体に突然起きる「発作」の症状の意味もあり、これは身体が何かにとらわれたような状態を表しているらしい。
空港の税関といえば、世界中で日々、ありとあらゆる物品がseizeされている。偽ブランド品や密輸品、武器などは当然として、人間の目玉や人骨とか、生きたヘビやトカゲ、トラの赤ちゃん、果ては毒グモのタランチュラ200匹がseizeされたこともあったとか。タランチュラの没収なんて、考えただけで身震いする。税関職員は命がけの仕事かもしれない。
ニュースではよく、捜査当局が家宅捜索を行って犯罪の証拠品などをseize(押収)するという文脈で使われる。MicrosoftなどのIT企業も、犯罪に使わたドメインをseizeする(差し押さえる)などして、こうした捜査に協力することがある。犯罪者は金儲けのチャンスをseizeし、捜査当局は摘発のチャンスをseizeして行動に出る。
もっと大掛かりな事件になると、seizeは「乗っ取る」「制圧する」の意味でも使われる。空港検査が緩かった1960年代から70年代にかけては、航空機がseize(ハイジャック)される事件が多発した。武装集団が公共の建物などをseize(占拠)するといったテロ事件は、今も世界各地で発生する。
seizeは悪いことばかりに使われるわけではない。例えば「seize the moment」「seize the opportunity」は「チャンスをつかむ」の意味。そして「seize the day」といえば、「先のことをあれこれ心配するよりも、今を楽しもう、今を精いっぱい生きよう」といった意味がある。
故ロビン・ウィリアムズ主演の映画「ミッドナイト・ニューヨーカー」(1986年)の原題は「Seize the Day」だし、同じくウィリアムズ主演映画「いまを生きる」(1989年、原題は「Dead Poets Society」)には、「seize the day」のもとになったラテン語の詩の一節「carpe diem」の名セリフがある。
ちなみに、米税関にAirPodsの偽物と見なされてOnePlus Budsを没収されたOnePlusは、「Seize the day. Seize the music」というツイートで切り返したとか。
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