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Wednesday, March 18, 2020

「築いたものがすべて吹き飛ぶ」可能性。Bリーグ残り試合中止への危惧 - auone.jp

 混乱とさまざまな想いが、観客のいないアリーナを覆った。

 世界で蔓延する新型コロナウイルスの影響で、2月末より試合を中断していたBリーグが無観客での再開を決めた。だが、選手や関係者に発熱者が出たため、2試合が試合直前に中止になるなど、異様な週末となった。


一度は無観客でBリーグ再開を決めたのだが......

 これを受けて、リーグは3月17日に各球団の代表者で構成される実行委員会と協議。その結果、当初は無観客で行なわれる予定だった4月1日までの試合(B1=54試合、B2=41試合)を、次節より中止にすると発表した。

 4月1日以降の試合については、すでに開幕や再開を遅らせているプロ野球やJリーグ等の状況を踏まえつつ、大河正明チェアマンは「トータルな判断をしていく」と話している。しかし、いまだ感染者数が増え続けるなかで、この中断期間が延長される可能性は否定できない。

 2016年に開幕して以来、Bリーグは最大の試練を迎えた。

 再開初日の3月14日、筆者は無観客で行なわれた千葉ジェッツ対宇都宮ブレックス戦へと赴いていた。優勝を争うチーム同士の好カードだけに、ほかにも多くのメディアが訪れた。


 しかし、試合後の取材をしていると、川崎ブレイブサンダースレバンガ北海道の試合が中止になったという報が飛び込んできた。聞けば、マーク・トラソリーニ、ケネディ・ミークス、市岡ショーンの3選手(いずれも北海道)が37度前半の発熱を出したためという。

 その翌日には、川崎と北海道の試合会場へ足を運んだ。すると今度は、船橋での試合(千葉vs宇都宮)が中断しているというではないか。

 また同日、B2リーグの東京エクセレンス対ファイティングイーグルス名古屋戦では、エクセレンスの撮影クルーが前日の試合を終えて帰宅したあとに発熱。その人物がどれほど選手や関係者らと接触していたかを確認するため、試合開始は1時間半ほど遅れた。

 本稿執筆時点で、上記の発熱者のいずれもまだ、新型コロナウイルスに感染したという事実はない。しかし、一般社会でもこのウイルスに対して敏感になるなかで、発熱をした選手や関係者が出れば当然、こうした混乱が起きるのは不思議ではなかった。


 プロ野球やJリーグとは違い、まだ4年目で財政基盤が盤石とは言えないBリーグで、たとえば残りのシーズンをすべて中止してしまうと、財政破綻をきたす球団が出る可能性は否めない。

 昨年、29歳(当時)という若さで千葉の社長に就任した米盛勇哉氏は、「不安定なベンチャー企業のような体質」のBリーグにおいて、ウイルス感染拡大には細心の注意を払いつつも、できるだけ試合を開催することで「持続的な発展」ができる、と話していた。

 しかしこの話を聞いたのは、3月14日の試合の前。これだけの混乱があったあとでは、心情にいくばくかの変化はあったかもしれない。

 収益はクラブによってまちまちだが、たとえば千葉や川崎のようなアリーナが満員に近い集客を毎試合期待できるチームになると、ホームゲーム1試合での入場料収入は1000万円を超えるという。

 これ以外に物販や飲食の売上もあるから、総売上は2000万円近くになるか。当然、試合数が多ければ実入りも多くなるわけだから、試合の中止は最も避けたいことであるのは言うまでもない。


 もっとも、今回の再開は無観客だったから、そういった収益は水泡に帰していた。千葉の場合だと、4月1日までの無観客期間でホームゲーム4試合を予定していたから、その分の入場料等の収益は得られず、プラス運営費がかかるため、損失は数千万円になっていたはずだ。

 2月26日、向こうしばらくの試合を延期する旨を発表した際、大河チェアマンはBリーグがまだ「よちよち(歩き)期間」だと表現しつつ、もしコロナの影響で最悪シーズン残りの試合がすべて中止になるようなことがあれば、「3年間築き上げてきた財政的なもの、すべてが吹き飛ぶくらいのインパクト」になると話した。

 しかし、選手やコーチら”現場”の思惑は、また異なっているように思えた。

 彼らもプロチームの人間として、経営的な側面は重々承知しているであろう。だがそれでも、人間の安全・生命をも脅かしかねないウイルスの危険性があるなかでのプレーに対し、十分に集中できていない選手も中にはいたようだった。


 無観客のなかでも多くのファンに見てもらえたのは、プロスポーツ選手としてやるべき仕事は果たせた——。3月15日の試合後、川崎のキャプテン・篠山竜青は、一旦プレーすると決めたからには無用な文句などは言わない、といった感じの、いつもの堂々とした口ぶりで話し始めた。

 ただし前日、試合が直前になって中止と発表された時のチームには、「少なからず動揺があった」と言う。しかも、15日の試合(16時5分開始)でさえ、正午すぎまで開催の可否が伝わってこなかったため、「みんな不安に思っていた」と言葉を紡いだ。

 選手たちを監督し、彼らに試合を「させる」立場のコーチたちの言葉は、さらに重かった。

 通常は淡々とした口調で試合後の取材に応える千葉の大野篤史HC(ヘッドコーチ)は、14日の試合後、抑えようとしても抑えきれない、そんな感情がにじみ出る言葉を発した。

 スタンドに客のいない試合は難しかったか、という質問が冒頭で出た。だが、大野氏にとって大事なのは、無観客かどうかではなかった。


「この社会情勢のなかでゲームをすること……コンタクトが多いスポーツ、飛沫や汗が飛ぶスポーツを(他競技に先んじて)最初に開始してもいいのか。それを選手たちに『いいからやれ』とは、僕たちには言えない。選手の気持ちを少し汲んでほしいなと思います」

 リオ五輪で日本女子代表をベスト8に導いた北海道の内海知秀HCは、15日の試合後、感染者が多く知事が「緊急事態宣言」を出すまでに至った北海道において、休止期間中に練習する場所を確保することすらままならなかったと話した。

 そして前日には、試合が中止。綱渡りのような状況でなんとか試合をこなし、張り詰めた緊張がほどけたのか、会見の途中で言葉を詰まらせ、目を潤ませる場面もあった。

 内海氏は「リーグ機構の(再開の)決断は苦渋の決断だったと思うが」と前置きしてから、「一番に考えてもらいたいのは、選手の安全だということ。何を差し置いても、そこだけは考えてもらいたい」と懇願した。


 17日の会見で大河チェアマンは、新型コロナウイルスの感染選手が出てシーズンを中断したNBAの心理的影響があったかもしれないと話した。だが、外国籍選手の一部は、感染者が世界中で増加する状況下での再開に、疑問と大きな不安を抱えている。

 2018年に日本へ帰化を果たし、代表チームでもプレーするアメリカ出身のニック・ファジーカス(川崎)は、幼い息子と娘を持っている。再開前日までは家族のことも考慮して、「プレーしないほうがいいのかな」という考えだったという。

「家に帰ることですらストレスに感じていたよ。なぜなら、今日も明日も、自分の子どもたちに何が起こるかわからないからね。家に帰れば彼らに触ったり、ハグをしたり、キスをしたりする。でも、何が起こるかわからない。それは本当に怖いことだよね」

 SNSでいつも歯に衣着せぬコメントを載せているジンバブエ出身のジュリアン・マブンガ京都ハンナリーズ)は、リーグが無観客での再開を決定したことを受けて、「The money isn’t worth it…」とツイートしている。生命を脅かすウイルスが蔓延するなかでプレーすることは、どれだけカネを積まれても「割に合わない」といったところか。


 この週末を受けて、Bリーグは日本バスケットボール選手会とも意見交換を行なっている。大河チェアマンは4月4日以降の「再度の再開」へ向けて、リーグ、クラブ、選手側の3者の共通認識を共有したうえで、それを目指すと話した。

 だが、完全な形での再開へ向けての「最大公約数」を探すのは容易ではない。

 そもそも、この社会情勢下でのリーグ継続うんぬんについて、リーグ、クラブ経営者側と選手側の間で思惑が完全一致することはありえない。当然だろう。選手は第一に安全を求めるが、リーグや球団側は経営的観点から試合の開催を重視するからだ。

 かつて横浜DeNAベイスターズで事業本部長を務め、現在は川崎の社長に就く元沢伸夫氏は、収益のほとんど上らない無観客での試合開催でも、「やらないよりはいい」というスタンスだ。

 同氏は「チケット代が入らない」ことはあくまで短期的なものであるとし、それよりも試合がないことで、「バスケット熱がものすごく上がってきた時にバスケが見られない期間が長くなることで、世の中の人が心理的にBリーグから離れていく」ことを危惧する。


「そのことのほうが損害としては甚大だなと思っています。キャッシュアウト(支出)という意味では、中止にしたほうが経営にとってはいいんです。ですが中長期で見た時、財政的に僕は無観客でも見てもらって、バスケットボールが楽しいっていうのをリマインドすることがすごく大事なんじゃないかと」

 選手や関係者の身の安全が守られるべき——いうことが大前提でありつつも、リーグや球団の存続も、当然ながら無視はできない。

 Bリーグはそこに、どう折り合いをつけていくだろうか。

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