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Wednesday, February 26, 2020

妹は虐待に気づいた…衝撃の動画 心愛さんの肉声 - テレビ朝日

 千葉県野田市で当時小学4年だった栗原心愛さんが被告の父親に虐待され、死亡したとされる裁判。2日目の公判が25日に開かれた。法廷には、父親の勇一郎被告の妹と母親が証人として呼ばれた。心愛さんと一時期ともに暮らしていた2人は父親の虐待に気付いていたのか。2人の目に栗原一家はどのように映っていたのか。検察側、弁護側、裁判員から質問が飛んだ。また、初日に裁判員の1人が動揺して泣いてしまい審理が中断していた、証拠の1つ、勇一郎被告が撮影した動画も廷内に映し出された。

―被告の実家での生活

 勇一郎被告の妹は野田市の実家で息子と両親と一緒に暮らしていた。心愛さんから見ると叔母にあたる。延べ8カ月間、実家で心愛さんとともに生活した。
 心愛さんが実家にいたのは2017年11月に児童相談所で一時保護される前後の5カ月間と、2018年9月から心愛さんが死亡する2019年1月の1カ月前までの3カ月間。妹は、自分の子どものように心愛さんを可愛がっていたという。その間、心愛さんが虐待されていることやその予兆には気が付かなかったのか。裁判前の供述調書では、勇一郎被告とは縁を切りたいと話していた妹。妹が座る証言台の周りにはパーティションが置かれ、傍聴席と勇一郎被告から姿が見えないようにされ、証人尋問が始まった。

―「パパに蹴られた」

 検察側の質問。まず、勇一郎被告の継続的な虐待を証明するカギとなる「心愛さんへの虐待を認識していたか」について。
 検察官:「2017年7月から9月、心愛さんと被告と一緒に生活していて印象に残ったことは?」
 妹:「夏ごろ、心愛が『夜中にパパに5時間立たされた』と言ったり、9月初めごろ、心愛の腰にあざがあることを知りました。心愛さんは『パパに蹴られた』と言っていました」
 検察官:「勇一郎被告にそのことを聞きましたか?」
 妹:「兄は『夜中に立たせていない』『蹴っていない、部屋が狭いので、ぶつけてあざができた』と言っていました」

 心愛さんが死亡する4カ月前、再び心愛さんと同居していた時期についてはー
 妹:「心愛が2018年9月に泣きながら電話してきたことがありました。実家に連れてこさせると、首が真っ白で、顔や腰にあざが4つありました。頭頂部と側頭部の髪の毛が抜けていて、『パパに引っ張られた』と言っていました」

 妹は心愛さんが虐待されていたことに気付いていた。ただ、この時、心愛さんは「どうしたの」と聞いても何も答えなかったという。妹は「次、何かあったら児童相談所に通報する」そう実家の両親には伝えた。
 また、心愛さんは自宅のアパートから実家に逃げてきた時、ご飯をむさぼるように食べていたことも証言した。その姿が印象的だったと話した。「夏休みにアパートでお母さんがご飯を2日間作ってくれなかった」「痩せると心配掛けちゃうからいっぱい食べるね」そう心愛さんは話していたという。妹はその姿を思い出したのだろうか。時折、泣きながら話した。
 最後に心愛さんはどんな存在だったか検察官から質問があった。妹は「私の…大事な大事な娘です」「心愛を返して…心愛を返して下さい!」涙ながらに被告に訴えた。その間、勇一郎被告は目を伏せ、表情を変えることはなかった。

―父親の顔 二面性

 弁護側は反対に勇一郎被告が心愛さんを可愛がっていた様子について質問した。被告と心愛さんが実家で妹や両親と一緒に生活していた際、勇一郎被告は育児もやっていたと妹は証言した。
 妹:「毎日、一緒にお風呂に入ってドライヤーで髪を乾かし、ヘアアイロンで髪を伸ばしてあげたりしていました。学校を転校した際には心愛が緊張するといけないからとあいさつ文を作って読ませたりしていました」

 心愛さんは父と出掛けた時の話も楽しそうに話していたという。
 妹:「外でシュークリーム屋さんを見ると『ここはパパと行った所だよ』、テレビで話題の映画を放送していると『これパパと見に行った』と話してくれました」

 心愛さんを可愛がる一方、同じ時期に心愛さんは「夜中に立たされた」「パパに蹴られた」と訴えていた。何か怒りのスイッチが入った時の暴力、勇一郎被告の陰と陽、傍聴席からその二面性が垣間見えた。

―衝撃の動画。心愛さんの肉声

 妹の証人尋問が終了した後、検察側の証拠として勇一郎被告が撮影した動画の審理が始まった。初公判同様、検察官は、勇一郎被告が心愛さんを虐待している様子を撮影したもので、少し刺激が強いかもしれないと話した。動画は裁判員にしか見えていないが、音声だけでも検察官の言葉以上に衝撃的なものだった。動画は全部で14本、計52分。数が多い。その一部が法廷で流された。1本目は心愛さんが深夜2時に玄関で土下座させられている様子を撮影したものだ。
 勇一郎被告:「土下座だよお前、早くやれよ」
 心愛さん:「じゃあ許せよ、家族に入れろよ」
 勇一郎被告:「無理〜」
 その後、心愛さんが土下座させられるとこまで動画は撮影されていた。勇一郎被告は心愛さんをからかうようだった。心愛さんの「じゃあ家族に入れろよ」という言葉。深夜2時に実の父親に「家族に入れて」とお願いする状況が理解できないまま、次の動画の説明へと移った。
 次に検察側は起訴内容の1つ、強要罪の証拠として被告が撮影した動画を流した。朝5時に撮影された動画は犯行そのものを撮影したものと説明された。
 「ハァ…。ハァ…」動画の冒頭、心愛さんは息苦しそうにしていた。傍聴席の記者たちは一斉に前のめりになり、動画の音に耳を澄ませた。
 「ハァ…ハァ…すみません…すみませんでした…」
 「屈伸だ屈伸」
 「助けて…ママ…」
 「やるんだよ!」
 「(苦しそうな声)」
 動画は全部で27分間、その最後まで心愛さんはスクワットを続けさせられていた。どこの世界に朝5時から娘を苦しませながら1時間、スクワットを強要する父親がいるのだろうか。
 検察側は再び別の強要罪についても証拠として動画を示した。動画は心愛さんが死亡する17日前に撮影されたもので、制裁として風呂場に立たせ続けた様子を撮影したものだった。
 「立てよ、何やってんだよ、風呂場行けよ、行けっ」
 「ママ嫌だ」「嫌だー!(泣きながら)」
 「行けっつってんだろ」
 他にも数々の動画や画像が証拠として示された。心愛さんが泣いているものや母親に助けを求めるもの。傍聴席には音声しか流れないが、流れていたのは紛れもなく心愛さんが苦しむ肉声だ。生々しく、心にへばり付いて離れないような声だった。

―母親と息子

 最後に被告の母親の証人尋問が行われた。捜査段階で母は「心愛ちゃんの体にあざを見つけ、自宅に帰すべきではなかった。心愛ちゃん以上に息子のことを大切で可愛いと思っていたのも事実です。最悪の場合、通報すれば勇一郎被告が捕まってしまうのではないかと思った」と話していた。
 母親も妹同様、パーティションで隠され、入廷した。冒頭、母が証人として話すうえでの誓約書を読み上げた時だ。これまで、全く表情を変えてこなかった勇一郎被告が顔を赤らめ、下を向いた。泣いているように見えた。勇一郎被告から母の姿は見えない。それでも久しぶりに母の声を聞いたからだろうか。公判で初めて勇一郎被告の心情が表れた。
 母親は勇一郎被告の性格について、「自分の意見を意固地に通そうとすることはあった。注意しても正義はこうあるべきだと理屈で責められると言い返せなくなる」「幼少期は小児ぜんそくで病弱だったが、スポーツもやり、友達も多かった」と話した。
 成人してから、母は勇一郎被告に生活費としてお金を貸していた。その額合計2000万。いつまで経っても親に甘える勇一郎被告。親から見れば今でも可愛い息子。そんな関係性のように見えた。
 肝心の心愛さんが虐待されていたかについては心愛さんが「夜中に立たされた」と言ってきた時も誰に立たされたかは聞いていない。勇一郎被告の暴行は見たことがない。虐待は頭になかったと虐待を認識していなかったと証言した。勇一郎被告は冒頭こそ顔を赤らめたが、その後は表情を変えず落ち着いていた。

―被告の妻、そして心愛さんの母親 

 26日は、去年6月に幇助(ほうじょ)罪で執行猶予付きの判決を受けた被告の妻であり、心愛さんの母親が証人として呼ばれている。今月25日の法廷では心愛さんが「ママ…」と母親に助けを求める動画が証拠として数多く示された。心愛さんにとって最後のとりでとも言える存在だった心愛さんの母。去年の裁判では放心した様子で、まともに歩けないほどだった。どんな姿で現れるのか。心愛さんの叫びは母親の瞳にはどう映っていたのだろうか。

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